コロナ禍によって、最低限の集合以外は全て中止に

 新型コロナウイルス感染症の拡大が「Co-Co Life☆女子部」の制作に与える影響や読者にもたらす「困りごと」は何だろう?

読者モデル、編集部のスタッフ写真上:脊髄性筋萎縮症のカノンさんは、高校時代から読者モデルを務める。現在は大学生になった。写真下:編集長の土井唯菜(どい・ゆいな)さん(軟骨無形成症)。テーブルを囲んでいるのは編集部のスタッフで、撮影風景の1コマ
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守山 当団体は、雑誌の発行を核に、障がい当事者やその家族が気軽に集まっておしゃべりでき、友達を作れるという「コミュニティー機能」を非常に重視してきました。読者モデルが集まる取材・撮影の日は大いに盛り上がり、本誌発行後には、毎回、関わった人を集めて「打ち上げ」を開催。また、年に数回、数十人を集めてのファンミーティング、ファッションショー、スナップ撮影会、合コンイベント、各種勉強会など、多彩な「友達を作る機会」を提供してきたんです。

 しかし、読者は、持病の影響などで感染リスクの高い人が特に多いため、コロナ禍において、撮影などの最低限の集合以外は全て中止としています。現在はオンラインイベントの開催、SNSの積極的な投稿などで補完している状況ですね。コロナ禍で、日頃よりさらに体調が不安とか、人に会えなくて孤独感を強めている、職を失ったという読者もいて、編集部のみんなで心配しています。来年2022年に「Co-Co Life☆女子部」は創刊10周年を迎えるため、感染症対策に留意しながら記念イベントを開催する予定ですが…。

 NPO施無畏の「バリアフリーという言葉がいらない社会の実現に向けて」というミッションとともに、「Co-Co Life☆女子部」は10年にもおよぶ長期間の情報発信を続けている。その過程における“社会変化”を守山さんはどう見ているのか――。

守山 実はよく、このご質問をいただくのですが、私は「2013年9月7日」を起点に見ています。この日、アルゼンチンのブエノスアイレスで行われた国際オリンピック委員会(IOC)総会で、イスタンブール(トルコ)、マドリード(スペイン)に競り勝ち、2020年のオリンピック・パラリンピックが東京に決まりました。日本中が、「東京オリンピック」に沸きましたが、「東京パラリンピック」に言及している人はわずかだったと記憶しています。「パラリンピック」に関する報道も、ほぼ皆無の状態でした。

 当時、「Co-Co Life☆女子部」は創刊2年目で、編集に参加していた私は「東京で、本当にパラを開催できるのか?」と疑問に思いました。その後、2016年4月に「障害者差別解消法*7 」が施行。この法律は、オリパラ開催を前提にしたものだと思います。この頃、法認知のためのシンポジウムやセミナーが増え、東京都内のバリアフリー対応も急速に進みました。当団体(NPO施無畏)も法関連で、数多くの講演・イベント登壇の機会をいただきました。

*7 「障害者差別解消法」は、全ての国民が、障がいの有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障がいを理由とする差別の解消を推進することを目的としている(厚生労働省ホームページより)。正式名称は「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」。

守山 同じく2016年頃から、東京都の啓蒙活動や、オリパラ公式スポンサーの企業広告などで、パラリンピックのトップアスリートのビジュアルが、大きく世に出るようになりました。街頭の大型ビジョン、山手線や都営地下鉄などの電車内での広告、テレビCM、オリンピックを盛り上げるためのイベント、テレビ番組など…パラの露出が急速に増えたのです。そうした動きとともに、障がい者ダンサーやミュージシャン、ファッションモデルなどのパフォーマー、障がいやバリアフリーの専門家・有識者もステージに立つ機会が増え、当団体もたくさんの障がい者インフルエンサーをキャスティングし、ステージに立っていただきました。

 2018年には、「障害者雇用促進法*8 」が改正施行され、企業の障がい者雇用もさらに進みつつあります。「SDGs」「ダイバーシティ」が企業間のトレンドワードとなり、世界全体が社会的課題の解決に積極的に動きだしている傾向も見られますね。

*8 「障害者雇用促進法」の正式名称は「障害者の雇用の促進等に関する法律」。2018年4月の改正で、障害者雇用促進法が適用される従業員数の引き下げと障害者の法定雇用率の段階的引き上げがなされた。

守山 実は、当団体では、2018年頃から、障がい当事者が働きやすいように全ての業務をクラウド化し、自宅から移動しなくても会議に参加できるよう、オンライン会議システムも導入していました。そんな中、コロナ禍によって、世界全体がリモートワークを推進するようになり、オンラインでのイベント開催やYouTubeの隆盛が起こりました。これは、障がいや難病の当事者が「体調や通勤・移動を気にせず、普通に社会参加できる時代」が一気に来たということなんです。本当に驚くべきことで、ダイバーシティに大きく貢献する流れだと思いますね。

 現時点で、パラリンピックが本当に開催されるのかは分かりませんが、少なくとも、パラリンピックの準備や、それを社会で受け入れるための各所での「覚悟」といった感覚が、障がい者の社会進出を発展させたのは間違いありません。この黄金の数年間は、日本のダイバーシティ史に刻まれるかもしれませんね。そして、パラリンピック以降の各国の施策、社会的トレンド、技術革新などで、「バリアフリーという言葉がいらない社会」も、明らかに近づいていると感じます。