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非連続の中の連続(3)
イノベーションは「いまそこにある」ニーズをとらえる

楠木 建 [一橋大学大学院 国際企業戦略研究科 教授]
【第25回】 2012年11月15日
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顧客の「する」はシンプルだ

 成功するイノベーションの条件が「非連続性の中の連続」にあるという話の最終回。前回は「できる」と「する」の間には大きなギャップがあるという話をした。非連続な技術であっても、それが「できる」だけではイノベーションにならない。顧客がその気になって必ず「する」。その絵が描けてはじめてイノベーションの芽が出てくる。

 最近のスマートフォン(iPhone)に限らず、このところイノベーションを連発しているアップルは、この10年で最もイノベーティブな企業だ。その一つの理由は、アップルほど「できる」と「する」の間のギャップに敏感な会社はないというところにある。顧客から見て明らかに非連続なものを提供する。その一方で、ユーザー(=ごく普通の大衆)の側にある大いなる連続性を直視する。多くの人々があからさまにそそられ、自然と「する」という確信がもてる製品しか出さない。だから、必然的に製品のバリエーションは小さくなる。あれほど巨大な企業になったのにもかかわらず、アップルの出している製品をすべて並べても、大きめのテーブルに収まってしまう。

 しかも、その製品に搭載する機能の取捨選択も、きわめて慎重だ。iPodと比べて、最近のiPhoneやiPadのような構造をもつ製品であれば、技術的にはありとあらゆる機能を盛り込める。しかしアップルは、顧客がその気になって必ず「する」という確信が持てる機能に厳しく絞り込む。このストイシズムが製品をシンプルにする。

 アップルの製品はデザインに競争優位があるというのはよく言われる話だ。これも再三指摘されていることだが、そこでいうデザインの秀逸さはシンプルさにあるという。しかし、「シンプルなデザインが得意」なのではない。最終的にモノに形を与えるデザイン力それ自体よりも、製品のコンセプトがそもそもシンプルなので、デザインも必然的にシンプルになる、といったほうが正しい。

 話は少しそれるが、ユーザーの側の連続性という観点から見ると、さまざまな「アプリ」をサード・パーティにつくらせるというiPhoneのやり方は非常にうまいやり口だといえる。iPhoneというプラットフォームには、それこそ無限のアプリケーションがあり得る。しかし、その多くは機能的にそういうことが「できる」にとどまり、顧客が実際に「する」までにはなかなかいかない。だからアップル自身はごく一部のアプリ(顧客が「する」と確信できるもの)にしか手を出さない。あとは第三者に開放して、「できる」と「する」の間にある溝を超えられないアプリについては、「どうぞ自然淘汰されてください」というスタンスだ。

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楠木 建 [一橋大学大学院 国際企業戦略研究科 教授]

1964年東京生まれ。1992年一橋大学大学院商学研究科博士課程修了。一橋大学商学部助教授および同イノベーション研究センター助教授などを経て、2010年より現職。専攻は競争戦略とイノベーション。2010年5月に発行した『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)は、本格経営書として異例のベストセラーとなり、「ビジネス書大賞2011」の大賞を受賞した。ツイッターアカウントは@kenkusunoki


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