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山崎元のマネー経済の歩き方

厚生年金基金廃止にどう取り組むべきか

山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
【第251回】 2012年11月12日
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 厚生労働省が厚生年金基金制度の廃止方針を打ち出して、話題になっている。内容の詰めは今後の問題だが、廃止まで10年程度の予備期間を設けることと、「代行割れ」の損失部分について、全部ないし一部を厚生年金本体で負担することを検討しているようだ。

 この問題には、厚生年金基金を設立している母体企業、年金基金、厚労省、それに年金関連業界の利害が複雑に絡んでいる。

 母体企業では、率直に言って厚生年金基金を設立したこと、あるいは基金に加入したことを後悔している経営者が多いだろう。経営者の感覚としては、それが「まとも」だ。実際に、ピーク時には1800以上あった厚生年金基金は、大企業の基金を中心に代行返上や解散が相次ぎ、今や基金の数は600を切った。後者は、主として、こうした足抜けの際の損失処理の負担に母体企業が耐えられないことで、やむを得ず残った基金だ。これらの基金は大半が積み立て不足を抱えており、その約半分で、損失が「上乗せ部分」に必要な積立金の額を超えて、厚生年金からの代行部分の積立金まで食い込む「代行割れ」の状態になっている。

 代行割れしていないことをもって「健全」な基金だとする報じ方が一部にあるが、これは正しくない。厚労省が、積み立て不足に対処する基準を甘くし過ぎたことと、積み立て不足の基金の資産運用で大きなリスクテークを認めたことの組み合わせが、今日の厚生年金基金の惨状を招いた。

 さて、母体企業の経営者としては、厚生年金からの「足抜け」の方法が悩ましい。自社が負担すべき分の損失の補填を厳格に求められるなら、少しでも早く、自社だけでも基金を脱退したいはずだ。ただし、この負担に耐えられない経営状態なら、基金から借金をしているのと同じだから、これを引っ張りたいと考えるかもしれない。

 ところが、健全な会社であっても、代行割れの損失部分について、国ないし厚生年金本体が損失の負担をしてくれるという場合、運用で大きなリスクを取って、資産の回復を目指したくなる誘惑が発生する。例えば、基金が現在代行割れぎりぎりの状態にあって、基金の解散時に代行割れ分の半分を公的に負担してくれるなら、運用のもうけは全額上乗せ部分の積立金の回復になる一方で、運用の損失は半分が国の負担だ。これは有利な賭けであり、10年という期間も、運用でギャンブルを行うに十分だ。

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山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。


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