韓国で120万部のミリオンセラーとなった話題書がある。『どうかご自愛ください ~精神科医が教える「自尊感情」回復レッスン』だ。精神科医である著者が「自尊感情(≒自己肯定感)」の回復法を指南した一冊である。「些細な事を気にしすぎる」「パートナーとの喧嘩が絶えない」「すぐに人と比べて落ち込む」「やる気が出ない」「不安やゆううつ感に悩んでいる」「死にたいと考えてしまう」など、多くの悩みは自尊感情の低下が原因だと本書は伝えている。そして、その回復法を教えてくれる。
本書の日本版が、ついに7月14日に刊行となった。日本でも発売即重版となり、さっそく話題を集めている。今回は、本書の刊行を記念して、その一部を特別に紹介する。

30代半ばからは「劣等感」を成長のエネルギーにしてはいけない理由Photo: Adobe Stock

「劣等感」は成功へのエネルギー?

 劣等感はまるで炎のようです。他人よりも足りない、劣っている、恥ずかしいと自分を責め、さらに被害者意識までが入り交じり、私たちを苦しめます。動悸が激しくなり、顔が熱くなります。心のみならず、体まで燃やしてしまう感情です。

 30代前半までは、その感情が劣等感かどうかの見極めすら難しいものです。何かをする原動力にもなり、情熱のようにも見えます。多くの人たちが劣等感を克服するために努力し、そのおかげで成功も手にしてきました。

 恋愛や仕事、ときには致命的なコンプレックスを克服しようと必死に勉強する場合もあるでしょう。または、自分の欠点をカバーできるくらいの魅力を得ようと努力する場合もあります。

中年以降に抱く「劣等感」は、体をむしばむ

 しかし、中年に差し掛かったら、劣等感は手放さなければなりません。かつて劣等感によるエネルギーを借りてきた人も例外ではありません。自責感や被害者意識を抱え続けるには限界があるからです。

 何より決定的な理由は健康の問題です。自分を責め続け、心をいじめることは体力的に負担が大きく、心臓や肺が劣等感の熱い感情に耐えられなくなります。

 そのため劣等感の強い人たちは、30代以降に病院を訪ねるケースが多くなります。若い頃は体力でカバーできたけれど、感情のたかぶりから動悸や不眠に悩まされるようになり、カウンセリングに訪れるようになるのです。

 劣等感によるつらさを飲酒で紛らわそうとする人もいます。感情を冷まそうと酒を浴びるように飲みますが、これも体に良いはずがありません。

 時々クリニックに訪れるこのような人たちは、カウンセリングに集中できないばかりか、“自分をコントロールできずに、結局は酒に飲まれてしまう”という新たな劣等感が加わり、つらい思いをしています。

(本原稿は、ユン・ホンギュン著、岡崎暢子訳『どうかご自愛ください』からの抜粋です)

ユン・ホンギュン
自尊感情専門家、ユン・ホンギュン精神健康医学科医院院長
中央大学校医科大学を卒業し、同大学医科大学院で博士課程を修了。京郷新聞、韓国日報、月刊生老病死などへの寄稿のほか、FMラジオ交通放送「耳で聞く処方箋」などの相談医としても活躍。韓国依存精神医学会、韓国賭博問題管理センター、中央大学ゲーム過没入センター、性依存心理治療協会、校内暴力防止のための100人の精神科医師会などで活動。主に関心を寄せている分野は「自尊感情」と「依存」。初の著書『どうかご自愛ください ~精神科医が教える「自尊感情」回復レッスン』が韓国で120万部のミリオンセラーに。