1915年の創業以来、“技術立社”を標榜する。今も産業用ロボットの生産台数では世界一だが、最近は自ら用途開発に乗り出す。

安川電機社長 津田純嗣<br />日本のロボット産業は黎明期<br />“用途開発”で裾野を広げたいPhoto by Hiroshi Nirei

──9月中旬、ドイツのバイエルン州にある欧州統括会社の中に、ロボット事業部門の新施設を開設した。併せて、作業者のトレーニング施設やロボットの修理施設、コールセンターも集約した。そこには、デモ設備やテスト機を置き、実際に動く姿を見せるそうだが、どのような狙いがあるのか。

 ドイツは4カ所目になる。

 本社工場のある福岡県北九州市、埼玉県さいたま市、米国のオハイオ州に続く“戦略的拠点”だ。

 ロボットを使う自動化設備の設計・製作を各種メーカーから請け負うシステムインテグレータの皆さんに、当社のロボット技術を「見て、知って、試してもらう」ことに主眼を置いている。

──近年、そのような設備の拡充を急いでいるのはなぜか。

 日本は、今も産業用ロボットを「造ること」では世界一の技術を持つ“ロボット大国”ではあるが、「使うこと」や「活用すること」に関しては世界一の座からすべり落ちつつあるからだ。地盤沈下が始まったという危機感がある。

──具体的に言うと、どのようなことを指しているか。

 例えば、2008年秋のリーマンショックの前は、ロボットの納入先は70%が国内だった。それが現在では、70%が国外になった。原因は、日本のメーカーが国外に生産拠点を移したことや、海外のメーカーがロボットを使うようになったことが考えられる。

 日本では、溶接ならば溶接用と“用途の名前を付けたロボット”が一般的だ。だが、欧州に行くと、「箱に詰めたチョコレートを日によって並べ替える作業をするロボット」など、“名前のないロボット”がたくさん存在する。