老後資金の準備をしなければ──。多くの人が“老後のお金”を意識してはいる。個人により意識レベルの違いは大きいが、何をすればいいのかわからず、問題を先送りしている人も少なくない。具体的な金額を見ていないからだ。何の備えもなければ、生活が破綻しかねない。いったいいくら必要なのか、老後の生活をイメージして、試算してみるのが第一歩だ。

平均的な老後世帯は
月4万3000円の赤字

 老後への備えを考えるに当たって、「最も重要なのは、老後の基本生活費を試算し、把握すること」(山田聡・山田FP事務所代表)である。

 実際にいくらかかるかは世帯によって大きく違うが、一例として、総務省統計局の「家計調査」(2011年度)から平均的な老後の生活像を見てみよう。

 夫65歳・妻60歳以上の夫婦・無職世帯では、月々の支出額は26万5000円(税金や社会保険料などを含む)。収入は、9割以上を年金に頼る形で、22万2000円だ。

 つまり、収支は毎月4万3000円の赤字である。足りない分は貯蓄などの取り崩しで賄っている、ということになる。

 退職後の生活は、何年続くと考えるべきか。

 厚生労働省の推計によれば、60歳時の平均余命は男性が22.7年、女性が28.1年である。ただ、これはあくまで平均であり、それ以上長生きする可能性が5割程度あると見るべきだ。男性で90歳、女性で95歳ぐらいまでは生きる前提でいたほうが無難だろう。

 仮に退職後の生活が30年続くとすれば、取り崩し額は計1548万円。35年なら1800万円を超える。

 平均でもこれだけの資産が必要だ。