ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論

10年以上続いた日本経済の「不安な安定」
その崩壊を予感させる3つの要因

伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]
【第23回】 2012年12月10日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

200%の公的債務を
支えられるのか

 少し前、債務危機に苦しむイタリアの政府関係者と議論する機会があった。「イタリアは財政問題で大変ですね」と挨拶代わりに話しかけたら、「お前に言われたくない」というような返事が返ってきた。正確な言い方をすれば、「日本は日本の仕事をすればよいのではないでしょうか」といった発言であったが、「お前に言われたくない」というのが、この方の気持ちを表しているような気がする。

 日本はGDP比で200%を超えるような公的債務を抱えている。一方のイタリアは120%程度である。公的債務の規模で見れば、日本のほうがはるかに深刻に見える。それでもイタリアの国債は金利が上昇しており、厳しい対応を求められている。日本の国債金利(10年もの金利)は0.7%近くという、世界最低の水準になっている。この違いはどこにあるのだろうか。

 よく言われるように、イタリアの国債はその多くを海外の人が持っているが、日本の国債は日本人が持っている。この違いがあるので、200%程度という公的債務があっても大丈夫だ、そう主張する市場関係者が多い。

 政府は40兆円以上の財政赤字を出し続けており、それは基本的には新規の国債発行で賄われている。つまり、毎年巨額の借用証書を出しているのだ。幸いなことに、市場にはお金がジャブジャブにあって、その行き場がない。これが国債購入に回る。

 預金はいくらでも集まるのだが、それを融資する貸し出し先がなかなかない。結局、国債で運用するしかない──多くの金融関係者はそう言う。お金があるので国債は消化でき、経済はうまく回っているように見える。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

伊藤元重 [東京大学大学院経済学研究科教授]

いとう もとしげ/1951年静岡県生まれ。東京大学大学院経済学研究科教授。安倍政権の経済財政諮問会議議員。経済学博士。専門は国際経済学、ミクロ経済学。ビジネスの現場を歩き、生きた経済を理論的観点も踏まえて分析する「ウォーキング・エコノミスト」として知られる。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」コメンテーターなどメディアでも活躍中。著書に最新刊『日本経済を創造的に破壊せよ!』(ダイヤモンド社)等多数がある。


伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論

「大いなる安定」の時代が去り、世界経済は激動期に突入した。新たな時代を迎えるための破壊と創造が求められるなか、日本経済が進むべき道とは?少子高齢化、グローバル化、IT化の進展といった長期トレンドを踏まえつつ、伊藤教授が現状のさまざまな問題を分析。20年後の日本経済を活性化する正しい戦略を提示する!

「伊藤元重の日本経済「創造的破壊」論」

⇒バックナンバー一覧