自民圧勝の総選挙は「中道左派=リベラル」の退潮を印象付けた。米国でオバマ大統領を支えたのはリベラルであり、フランスのオランド大統領は社会党だ。格差を生み出すグローバル市場主義に平等志向で対峙する中道左派はなぜ日本で支持を得られないのか。

 答えは明白だ。旧左翼と市民運動の間に「深い溝」がある。越えようとする覚悟がない。組織防衛が先に立ち「妥協」を拒む。負け癖がついて敗北に危機感が伴わない。

 リベラルはグローバリズムの反作用であるナショナリズムに押され気味だ。不況への苛立ちから拝外主義や強い政府を求める空気は欧米でも起きている。尖閣・竹島・北のミサイルなど近隣の不愉快な動きが右の追い風になり、中道左派は結束できないまま自民党の独走を許した。

反原発で共闘の機運も
既成政党の厚い壁に阻まれ

 東京5区で日本未来の党から立候補した丸子安子さん(44)は、

「選挙がこんなに孤立した戦いとは思わなかった。党からの応援はなく、NPOに頼んでも政治活動はしないと断られ、身内だけの選挙運動では有権者に浸透しようがなかった」

 と振り返る。3.11以前は子育てしながらファッションデザインに励むワーキングマザーの一人だった。広がる放射能汚染に危機感を抱き、原発停止を求める署名集めに加わった。自然エネルギーへの転換を求め、国会議員に働きかけるロビー活動もした。政治を他人任せにしていたことが「原子力ムラ」や「安全神話」を生んだと反省し時間や労力を反原発の活動に振り向けた。

 明治大学の中沢新一教授を中心に、ドイツで台頭する環境政党「緑の党」のような反原発を掲げる市民運動・グリーンアクティブが始動し、この中から「反原発の候補者調整ができないものか」という声が上がった。嘉田由紀子滋賀県知事を担ぎ政党に候補者調整を促す動きが密かに進められた。