ウクライナの正教会の統一を宣言したとはいえ、これはウクライナ政府が政治力をもってして成し遂げた出来事でした。

 こうして誕生した新生ウクライナ正教会はコンスタンティノープル総主教庁の承認を得て誕生したため、宗教上は非合法ではないにせよ、世界の正教会からはほとんど祝福されていないという状況となっています。

宗教問題も横たわるロシアのウクライナ侵攻

「第1のローマ」とはローマ帝国、第2のローマは東ローマ帝国のことです。そしてロシアは「我こそは東ローマ帝国の後継国家である」という自認から、「第3のローマ」を自称しています。こうしたことも背景の一つとして、ウクライナやベラルーシはロシアの一部であると思っている節があります。

 そして、ローマ正教会から勝手に出ていったウクライナ正教会が許せないだけでなく、聖地キエフを首都に戴いているウクライナのことを許せないという想いがあるのかもしれません。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は、ロシアのウクライナ侵攻が始まった4日後、コンスタンティノープル総主教バルトロメオ1世と電話で会談しています。改めてウクライナ正教会がロシア正教会から独立したことを確認しています。

 ロシアのウクライナ侵攻には宗教問題も背景の一つとしてあると考えられるわけです。

【関連記事】『「宗教」がわかれば、ロシアとウクライナの関係がもっとわかる』