M&A強者のJTがロシアのウクライナ侵攻で抱える「3大リスク」とはPhoto:PIXTA

ロシアがウクライナに侵攻して1カ月が経過した。情勢の悪化やロシアに対する国際的な経済制裁は、日本企業のビジネスにも大きな影響をもたらしている。日本たばこ産業(JT)もその一つだ。ロシアのウクライナ侵攻がJTの業績に与えるインパクトはいかほどか。また、JTが抱えるリスクとは。決算書から読み解いてみよう。(中京大学国際学部・同大学院経営学研究科教授 矢部謙介)

ロシアに4000人、ウクライナに1000人の従業員
ウクライナ侵攻がJTに与える影響は?

 ロシアのウクライナ侵攻により、グローバルに事業を展開する日本企業にも大きな影響が出てきている。

 海外でたばこ事業を広く展開する日本たばこ産業(JT)は、3月10日にロシアでの事業に関して「新規の投資及びマーケティング活動を一時的に停止」すると発表した。発表時点ではロシアに保有する四つの工場の稼働や約4000人の雇用を維持する方針を明らかにしているが、今後の事業環境が大幅に改善しない限り、ロシア市場における製造を一時的に停止する可能性もあるとしている。加えて、JTはウクライナで約1000人の従業員を抱えており、製造を含むオペレーションは停止している状況だという。

 業績に対する懸念により、JTの株価(終値)は侵攻前の2月18日における2344円から、侵攻後の3月11日時点では2012円まで下落した。

 今回はJTの決算書から、ロシアによるウクライナ侵攻がJTの業績に対してどのようなインパクトを持つのか、読み解いていくことにしよう。