「箸の先端」を感じる走りを追求した
「CX-60」の走り味とは?
PHEVは、電池容量17.8kWhのリチウムイオン電池を車体床部に置くため車両重量が大きいが、最高出力141kW・最大トルク261Nmのガソリンエンジンを最大出力129kW・最大トルク270Nmのモーターがアシストして出足は軽やかだ。8速オートマチックトランスミッションは、液体を使うトルクコンバーターではなく、クラッチによるダイレクト感がしっかり出ている。
ハンドリングにも特長がある。FR構造の車体設計の思想として、「人間の五感を把握することによる身体拡張能力の発揮を目指した」(松本浩幸執行役員)という。イメージとしては、食事で箸を使うとき、人の意識は手元ではなく箸の先端に集約され、微細な感覚をつかみ取ることができるが、そんなふうにクルマを操る。
確かに、走行中はクルマ全体の重ったるさはなく、またコース内で先導した既存モデルの「CX-5」や「CX-8」と比べるとクルマの前後が触れるピッチングが少なく、スッキリとして走り味である。
次に、ディーゼルエンジン48Vマイルドハイブリッド車に乗り換えると、かなりパワフルだと感じる。最高出力187kW・最大トルク550Nmと電動モーターの最高出力は12.4kW・最大トルク153Nm。エンジン回転数が2000rpm以下でモーターアシフトがしっかり利き、そこからディーゼル特有の太いトルク感につながり、さらにディーゼルエンジンでは高回転域に属する4000rpm以上でもグイグイと伸び感がある。
また、クルマ全体の重量バランスが影響して、先に乗ったプラグインハイブリッド車よりも、「箸の先端」を感じるようなイメージがつかみやすい印象だ。
燃費について、試乗時点で数値は未公開だったが「コンパクトカー並み」という。中井執行役員は「従来の2.2リッターディーゼルに、気筒当たり同じ容量(ボア・ストローク)の2気筒を追加した6気筒3.3リッターで、ピストン上部の形状を工夫し燃料効率をさらに高めた」という。
一般的なイメージでは、排気量を上げると燃費が下がると思うが、「空気量を増やして的確な燃焼を行えば、かえって燃費は上がる」というマツダSKYACTIV技術の真骨頂である、究極の燃焼による匠の技を強調した。
このように、クルマの出来としては上々の「CX-60」。マツダは同モデルを皮切りに、ラージ商品群と呼ぶ上級モデルラインアップを拡充する。
一方で、スモール商品群は「マツダ3」、「CX-30」、北米向けの「CX-50」などFF(フロントエンジン・フロント駆動)の車体構造を持つ。そのほか、「CX-5」など12年導入の第6セダン商品群が当面、混在することになる。
自動車メーカーの企業規模で見ると、こうした多モデル化と多様なエンジンラインアップは収益を圧迫するように感じる。
だが、マツダが長年提唱している、一括企画とモデルベース開発という開発プロセスにより「開発コストは、ラージ商品群は従来モデルと比べて25%ほど軽減できている」(廣瀬専務執行役員)と説明する。
グローバルで、「2050年カーボンニュートラル達成」が自動車メーカーにとって必須となってきた今、マツダは独自の経営手法で未来を切り開こうとしている。