【具体的なお悩み】
 現在就職しており、私1人で月40万円ほどの給与があるものの、年齢は70代に差しかかりました。いつまでこの職に就いていられるか不明です。職を離れた後は、年金などを合わせた世帯年収が50万円程度に下がり、今のままでは大幅な支出過多になってしまいます。

 生活にある程度の余裕を持たせたいのですが、保有している米国不動産は売却せず、保有し続ける予定です。というのも、私の妻は米国人で、彼女が将来米国に住むことを想定して購入したものだからです。

 そこで、日本の自宅を担保に入れ、リバースモーゲージを利用したいと考えています。担保にするつもりなのは、現在住んでいるマンション(築17年、市場価値約8000万円)です。

 これを実現すれば、(1)日本の自宅と米国不動産の住宅ローンを完済し、リバースモーゲージに一本化する、(2)住宅ローンの返済をリバースモーゲージの金利のみとする――というシナリオが可能になります(リバースモーゲージによる借入限度額は4000万~4500万円を想定)。

 その場合、離職後の月額収入は、年金(日本+米国)+米国不動産収入(管理費・税金等控除後)=65万円となります。また、離職後の月額支出は、リバースモーゲージ金利+生活費+88歳の義母扶養費=60万円となり、余裕ができます。

 リバースモーゲージには、金利上昇リスクと担保価値の下落というリスクが伴いますが、最悪の場合には米国不動産(現在価値5000万円)の売却益を充てることが可能です。
 
 以上のようなプランを、どう評価されますか。専門家の立場からアドバイスをいただけたら幸いです。

子供がいないとはいえ
保有資産が1000万円では少ない

 早速、Rさんが働き続けた場合と、仕事を辞めてリバースモーゲージを利用した場合の家計収支を試算しながら、資金計画を確認していくことにしましょう。

 Rさんの毎月の収入は、40万円の給与に日本と米国の年金、米国の不動産収入を合わせて85万円、年間1020万円になります。一方、毎月の支出は住宅ローン、生活費、義母の扶養費を合わせて69万円、年間828万円です。1020万円の収入に対して828万円の支出ですから、年間192万円の黒字家計になります。

 一方、Rさんが何歳まで働くかは記載がありませんが、保有する金融資産額が現金と株式を合わせて1000万円しかないのは、少ない印象です。

 子どもがいないとはいえ、突発的な支出や医療費、Rさんが亡くなった後の奥さまの生活費などを考えると、1000万円の金融資産ではやや不安が残ります。できれば、仕事を続けている間に、家計の黒字額である192万円、可能であれば200万円を年間の貯蓄に回したいところです。

 次に、仕事を辞めてリバースモーゲージを利用した場合の収支を試算します。離職後の毎月の収入は日米の年金と、米国の不動産収入の合計65万円、年間780万円になります。一方、支出は金利と生活費、義母の扶養費を合わせて月60万円、年間720万円です。

 収入780万円、支出720万円ですから、年間60万円の黒字ということになります。ただ、義母が現在88歳と高齢であることを考えると、扶養費用は将来的に減っていくと思われます。その半面、義母の終活(介護や看病、もしもの場合に備えた葬儀・お墓の準備など)をどうするかが気になります。

 義母が金融資産を保有しているのか否かも記載がありませんが、義母の終活の費用に加えて、施設に入る場合はその費用も発生します。義母の金融資産などでこれらの費用が賄えないのであれば、Rさんに費用負担が発生することは覚えておいてください。