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田中均の「世界を見る眼」

「失われた20年」の脱却に信念をかけた人材育成を
英国流プロフェッショナリズムに学ぶ日本再生の要諦

田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]
【第16回】 2013年1月16日
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プロフェッショナルとしての
信念を持つための3つの心がけとは

 国家の基本は人材である。政府も企業も優れた人材を育てることに、もっと真剣でなければならない。

 私は外務省を退官して8年近くになるが、この間、大学院でゼミを持ち、異なる職業の社会人に向けたいくつかの塾を主宰し、外務省や公務員研修所などでの講義をして若い人々に接し、私なりに人材の育成に携わってきた。

 

 自分自身の経験を通じて蓄積してきた外交や戦略の考え方以上に大事だと思い、意識して議論するのは、プロフェッショナルとしての生き方についてである。

 今日、政治家や官僚、ジャーナリストや企業人を含め、プロフェッショナルとしての信念に欠けた人々が多くないか。職業上の使命感よりも自己保身や人間関係の前さばきだけを旨として生きている人があまりに多くないか。日本の失われた20年は、プロフェッショナリズムが失われた20年と言えるのではないか。

 私がプロフェッショナルの心がけとして強調するのは、「物事の本質を見よう」「変えることに躊躇をするな」そして「競争を避けてはならない」という3つの点である。

 物事の本質を見分けるためには、十分な情報を得るとともに情報を評価できる知見を持たねばならない。表面的な文字面や過去の先例や決まり事だけを重視し、本質を避けて通ってしまうほうが楽である。

 そして、特に政治家や官僚は既得権益に縛られ、変化を嫌う。さらに「みんなで渡れば怖くない」とばかり、何よりも横並びと和を重視し、競争し個が抜きんでることを嫌うのは、日本の伝統なのであろうか。本質を見ることをせず、変えることに臆病になり、競争を避けるがゆえに日本の社会は停滞していっているのではないか。

 本質を見、変化を実現し、競争を厭わない人材が社会の発展の原動力であることを強く意識したのは、計12年間にわたる英国と米国での留学や研修、勤務経験の故であると思う。

 英国も米国も、プロフェッショナルを重視し変化を厭わないダイナミックな社会であり、それをもって一時の衰退から抜け出した国々である。特に英国から学ぶことは多い。

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田中 均 [日本総合研究所国際戦略研究所理事長]

1947年生まれ。京都府出身。京都大学法学部卒業。株式会社日本総合研究所国際戦略研究所理事長、公益財団法人日本国際交流センターシニアフェロー、東京大学公共政策大学院客員教授。1969年外務省入省。北米局北米第一課首席事務官、北米局北米第二課長、アジア局北東アジア課長、北米局審議官、経済局長、アジア大洋州局長、外務審議官(政策担当)などを歴任。小泉政権では2002年に首相訪朝を実現させる。外交・安全保障、政治、経済に広く精通し、政策通の論客として知られる。

 


田中均の「世界を見る眼」

西側先進国の衰退や新興国の台頭など、従来とは異なるフェーズに入った世界情勢。とりわけ中国が発言力を増すアジアにおいて、日本は新たな外交・安全保障の枠組み作りを迫られている。自民党政権で、長らく北米やアジア・太平洋地域との外交に携わり、「外務省きっての政策通」として知られた田中 均・日本総研国際戦略研究所理事長が、来るべき国際社会のあり方と日本が進むべき道について提言する。

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