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山田厚史の「世界かわら版」

検閲に風穴空けた「南方週末」事件を
日本のジャーナリズムは笑えるか

山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]
【第27回】 2013年1月17日
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 検閲・削除・書き換え。権力者による言論封殺に中国紙「南方週末」の記者が体を張って抵抗した。いったん決めた方針は面子にかけて貫く中国共産党も今回は譲歩し、記者を処分しないと約束した。言論の自由は勝ち取るものだ、と身をもって示した中国のジャーナリストがまぶしい。

 憲法で「表現の自由」を保証されている日本のメディアはどうだろう。日本の記者は、中国の記者より立派な仕事をしている、と胸を張れるだろうか。

 南方週末で起きた言論介入を、他人事として笑えるだろうか。

 リーク情報を自分の手のひらに落としてもらおう、と権力に擦り寄ることはないのか。目先の利益や取材競争に勝つため、力ある者におもねって、権力を監視する使命をおろそかにしてはいないか。

 日本国憲法は21条で「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保証する」とある。自民党が昨年4月に発表した「日本国憲法改正草案」にもこの条項は残っているが、見過ごすことが出来ない「第2項」が、次のように追加された。

 「前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」

 すっと読むと当たり前のように見えるが、「公益」「公の秩序」は「表現の自由」より優先すると書き込まれているのだ。では公益や秩序は誰が判断するのだろう。

南方週末事件の顛末

 中国でも表現の自由はあることになっている。だが「社会秩序を維持するため」に共産党宣伝部が記事に目を光らせ、報道機関を指導している。事実であっても、国家や党の信頼を損ねるような情報は「微妙な問題」として公表を抑えられる。根拠は「公益優先」だ。

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山田厚史 [デモクラTV代表・元朝日新聞編集委員]

やまだ あつし/1971年朝日新聞入社。青森・千葉支局員を経て経済記者。大蔵省、外務省、自動車業界、金融証券業界など担当。ロンドン特派員として東欧の市場経済化、EC市場統合などを取材、93年から編集委員。ハーバード大学ニーマンフェロー。朝日新聞特別編集委員(経済担当)として大蔵行政や金融業界の体質を問う記事を執筆。2000年からバンコク特派員。2012年からフリージャーナリスト。CS放送「朝日ニュースター」で、「パックインジャーナル」のコメンテーターなど務める。

 


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元朝日新聞編集員で、反骨のジャーナリスト山田厚史が、世界中で起こる政治・経済の森羅万象に鋭く切り込む。その独自の視点で、強者の論理の欺瞞や矛盾、市場原理の裏に潜む冷徹な打算を解き明かします。

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