ボーイング787機の相次ぐトラブルで、空の便に混乱が出始めている。
1月16日朝、全日本空輸(ANA)のB787機が異臭を発して高松空港に緊急着陸した。1月7日に日本航空(JAL)の機体が米ボストン・ローガン国際空港で出火したのに始まり、1月に入ってから日本の航空会社が運航するB787機のトラブルとして確認されたのは計7件に上る。もはや看過できるレベルではなく、国内にあるB787機は全機の運航を停止して一斉点検に入ることになった。
現在、ANAは国内・国際線合わせて運航している全231機のうち17機が、JALは全217機のうち7機がB787機だ。1~2機であればともかく、10機単位の機材が一斉に使えないとなるのと機材繰りに支障が生じてしまい、運航への影響は尋常ではない。
すでに16日時点で、ANAは国内線32便、国際線7便が欠航。JALでは、一部のシンガポール便は大型機のB777機で代替できたものの、モスクワ便、サンディエゴ便など国際線8便が欠航となった。
エアラインの中長期的な経営計画にも影響を及ぼしそうである。
B787機は、機体にカーボン素材を採用した最新鋭機で、中型機でありながら大型旅客機並みの長距離を飛べるのが特徴だ。
このため、ANAやJALといった航空各社は、需要が少なく大型機のB777機では赤字になってしまう路線でもB787機であれば利益が出るとして、積極的に新路線を開設してきた。
ANAの米シアトル便(12年7月開設)、米サンノゼ便(13年1月開設)、JALの米ボストン便(12月4月開設)、米サンディエゴ便(12年12月開設)がそうである。
B787機のローンチカスタマー(最初の発注者)となったANAは合計で66機、JALは45機と大量にB787機を発注しており、今後もB787を使っての新路線による成長戦略を描いている。ANA、JALともに今のところB787機の発注計画に変更はないとしている。もともと、初号機は北京オリンピックの開催に合わせて2008年に納入される予定だったが、部品の不具合や設計変更が相次ぎ11年秋にずれこんだという経緯がある。新機種への初期不良はあるとはいえ、米国でも運輸当局による包括的な調査に入っており、今後の納入スケジュールにさらなる遅延が出る可能性が出ている。
ブランドイメージの毀損も懸念される。“安全”が至上命題の交通機関だけに、徹底した原因究明が求められる。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 須賀彩子)