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スポーツと経営学

スポーツとナショナリズム
――愛国心という名の難しい友人との付き合い方

嶋田 毅 [グロービス 出版局長兼編集長、GLOBIS.JP編集顧問]
【第7回】 2013年1月18日
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スポーツ界をビジネスの視点から見る「スポーツと経営学」。第7回は、古今東西のナショナリズムとスポーツの関わりを題材に、そのあり方について考える。

噴き出すナショナリズム

 この夏の政治・国際ニュースとして、竹島をめぐる韓国との軋轢、そして尖閣諸島をめぐる中国、台湾の激しい行動について触れないわけにはいかないだろう。

 特に尖閣諸島をめぐる中国の行動は、ここ数年なかったような緊張を日中間に生み出した。各地で反日デモが起き、日系の店舗・オフィスや、日本人を相手にした店舗が、デモの標的とされた。中にはデモとは名ばかりの略奪などもあったようで、現地のイオンなどは大きな損害を被ったとされる。また、現地のスタッフの独断(本稿執筆時点の報道による)で尖閣に言及する張り紙をウインドウガラスに張ったユニクロは、日本の愛国的な人々から怒りを買い、またビジネスモデルが中国での生産を前提としていることから、1日で株価を7%以上下げるという事態にも見舞われた。

 一説には、今回のデモは中国指導部の交代に絡み、各派閥の思惑が複雑に交差したためにおきた「複合官制デモ」との分析もあるようだが、いずれにせよ、複雑な国内事情(所得格差の拡大、共産党への不満など)を抱える中国が、国民の対内的な不満のはけ口として今回のデモをある程度黙認し、同時にそれによって政府共産党の求心力を増そうとしたという分析は一定の説得力を持つ。

 実利的・経済的な観点からみれば、日中両国のビジネス関係が悪化してしまうと、長期的に見て両者に得はないはずである。しかし、そう簡単に割り切って話が進まないのが国家や国民というものである。感情を持つ人間という動物が関与する営みである限り、強い感情が合理的な判断を妨げてしまうという認識は常に持つ必要があろう。

 さて、ビジネス同様もしくはそれ以上にナショナリズムという強い感情に翻弄されてきたのがスポーツである。本稿では、スポーツがナショナリズム高揚の手段としてどのように用いられてきたか、その典型例をみるとともに、それと良い関係を築く上でのヒントについて考察してみたい。

 なお、ナショナリズムは単なる愛国心という意味以上に複雑な意味合いを帯びる用語であり、状況によっては国粋主義や民族主義と訳されることも多い。ここでは、それらを包含した思想・運動と、やや広義の意味で用いていく。

最悪の見本
――1936年のヒトラーの「ナチ・オリンピック」

前回のオリンピックに関する考察でも少し触れたように、スポーツイベントとしてのオリンピックは、その規模、参加国数、4年に1度という希少性、競技レベルの高さ、必要となるインフラ(その国の経済力や国力を示す)、そしてそれらゆえに生じる注目度の高さから、群を抜いて人々のマインドに影響を与えうるイベントと言える。それに次ぐのが男子サッカーのワールドカップだろうが、おそらくオリンピックは、その数倍のインパクトを持つものと想像される。

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嶋田 毅 [グロービス 出版局長兼編集長、GLOBIS.JP編集顧問]

東京大学大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社、主に出版、カリキュラム設計、コンテンツ開発、ライセンシングなどを担当する。現在は出版、情報発信を担当。累計120万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」や、「グロービスの実感するMBAシリーズ」のプロデューサーも務める。
グロービス経営大学院や企業研修においてビジネスプラン、事業創造、管理会計、定量分析、経営戦略、マーケティングなどの講師も務める。また、オンライン経営情報誌 GLOBIS.JPなどで、さまざまな情報発信活動を行っている。


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スポーツが魅力的で人々を惹きつけ続けるためには、やはりビジネスとの関係は切っても切れない。この連載では、そんなスポーツ界をビジネスの視点から分析、探究していく。

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