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『会社人間だった父と偽装請負だった僕』編集者が語る

今こそ労働の意味を問い直すべき

【第50回】 2009年2月17日
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会社人間だった父と偽装請負だった僕―さようならニッポン株式会社
『会社人間だった父と偽装請負だった僕―さようならニッポン株式会社』赤澤竜也[著]定価1575円(税込)

 本書のもとになった原稿を初めて読んだとき、不思議な感覚に陥りました。それは、そこに描かれた赤澤竜也氏の体験が、私自身の幼い頃の体験にとても似ていたからです。

 私自身、ある県の企業城下町で生まれ育ちました。小学校では級友のほとんどが同じ会社に勤める父親を持ち、社宅だけでひとつの街が形成されるほどでした。皆、会社の運動会やお祭りなどのイベントを楽しみにしていました。夏休みには会社が運営するプールに行き、会社の保養所に泊まりました。

 生まれた場所も年代も違うのに、赤澤氏と私の子供時代の体験は不思議なほどに似ていたのです。きっと1960年代から70年代にかけての記憶を持っている幅広い年代の方が、本書を通して同じような感覚を体験されることと思います。

 ですが、今やそんな懐かしい風景はどこにも残っていません。私の生まれた町でも、社宅は取り壊され、マンションやホームセンターが建っています。プールは埋められ、運動会やお祭りが開催されることもありません。

 そして何よりも、会社はその規模の大小を問わず、自らの存続のためにそこで働く非正規雇用者はもちろん正社員でさえも切り捨てなければならない状況に陥っています。かつて、温かく大きな存在だった会社は、冷たく非情な存在になってしまったかのようです。

 しかし、赤澤氏が訴えかけるのは、格差社会といわれる現状への単なる批判でもなく、家族主義的株式会社へのノスタルジックな思いだけでもありません。

 本書は、その多くが赤澤氏の個人的な体験と心情で構成されています。ですが、そこには、今の社会が抱える歪みや不条理さ、そこに暮らす人たちの営みが驚くほど普遍的な形で描かれています。

 かつて、この国の“一億総中流意識”を支えていた「いい大学に入り、一流企業にさえ入っておけば人生は安泰」という共同幻想はとっくに消え去り、社会は大きな転換点を迎えています。先行きの見えない閉塞感に覆われている今、私たちは何を拠り所に、どんな社会を目指していけばいいのか。行間から赤澤氏の問いかけが伝わってきます。

 ぜひ本書で赤澤氏の個人的かつ普遍的な体験と心情に触れてみてください。

(編集担当・笠井一暁)


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