これからの受験生の心構え

石川一郎石川一郎(いしかわ・いちろう)
カリキュラムアドバイザー(聖ドミニコ学園星の杜中高など)。21世紀型教育機構理事。1962年東京生まれ。早稲田大学教育学部社会学科地理歴史専修卒業。社会科(日本史)教員として、暁星国際学園、ロサンゼルスインターナショナルスクールなどで教える。かえつ有明中学・高等学校元校長。香里ヌヴェール学院元学院長。著書に『2020年の大学入試問題』(講談社現代新書)、『2020年からの教師問題』(ベスト新書)、『2020年からの新しい学力』(SB新書)、『いま知らないと後悔する 2024年の大学入試改革』(青春新書インテリジェンス)、『先生、この「問題」教えられますか?』(洋泉社)、共著に『学校の大問題』(SB新書)など。

後藤 立命館アジア太平洋大学(APU)などいくつかの心ある大学は、総合型選抜でもきちんと論理的思考力を問うたりしています。それをしていない大学とは、今後すごく差が開いていくと思います。

 MARCHはそもそも、総合型選抜をあまりしていません。それは、5教科を学んで東大・京大はじめ国公立大を落ちてくる子を順に拾うからいいと思っているからです。ところが時代は変わって、3教科しかやらない子たちが入学してきている(笑)。

 これは早慶にもいえることですが。本当は学力観が多様になっているのに、大学が対応できていない。毎年、「大学入学者選抜実施要項」が文科省から出されます。入試のバイブルであり、これに基づいて各大学が募集要項を作成します。私立大には、この「大学入学者選抜実施要項」をよく読んでもらいたいですよ。

 大学入試で考慮すべき「学力の3要素」とはなんなのか。知識・技能だけじゃなく、課題解決や探究をするための思考力・判断力・表現力等を求めています。さらに「学習に向かう力」、つまり意欲も学力の要素だと。

 歴史事項を覚えることは、この学力の3要素のどのくらいを占めるのでしょうね。大学入試で問われる歴史事項をあれだけたくさん覚えるには、忍耐や意欲がないと無理です(笑)。「苦役世界史」「忍耐日本史」です。

石川 この2年間を見ると、共通テストは頑張ったなという印象です。確実に変化が見られる。数学の問題を僕は気に入っています。二次関数や三角関数も、本来はこうした社会課題があって、という教え方をしているはずです。数学の先生からすると、とてもコスパが悪く、対策が非常に難しい。

後藤 つまり、教えたかいがない(笑)。

石川 多少、計算量が多かったとはいえ、数学の問題の変化に、「やる気を出したな」と感じましたね。試行調査の問題を見ると、地歴・公民科もまだこなれてはいないものの、なんとか対応している。課題解決に向けて歴史的な事象を学んで、という視点が出てきたと思います。

 日本史ですと、これまでは江戸時代後期の政治といったくくりで出題されてきました。それが、時代をタテに見る総合問題やテーマ史が増えた感じを受けています。現場からすると、そうした変化は定期テストの問題が作りづらく、入試にも比較的対策がしにくい。

 出題する大学の側も結構大変ですが、経済や貿易などテーマで見ていくと、社会課題の解決という点では役に立つと思います。