イヤな「あだ名」はお断り!法的視点から見たその理由自分がどう呼ばれるかは本人が決める。呼ばれる人が納得できない「あだ名」は使えない  イラスト:ソノダナオミ

「あだ名」は、相手との距離を縮めることもあれば、誤った使い方をすると相手を傷つけてしまう危険性も持ち合わせている。不本意なあだ名には、法的視点から見るとどのような問題があるのだろうか。「愛称」「ニックネーム」が「嫌なあだ名」に変わる過程を見ながら考えてみよう。

自分がどう呼ばれるかを決めるのは自分

 友だちと互いにあだ名で呼び合うことは日常的にあることです。でも、呼ばれてうれしいあだ名(愛称、ニックネーム)がある半面、嫌な思いをするあだ名もありますね。そうしたすれ違いがトラブルに発展してしまうこともあります。では、「良いあだ名」「悪いあだ名」は誰がどのように決めるのでしょうか。次のケースで考えてみましょう。

■ケース4■ あだ名が嫌で学校に行けない

Aさんは、人気アイドルグループの中心メンバーである「姫」ちゃんに顔立ちが似ているため、よく「姫ちゃんにそっくり」と言われます。

ある日、仲良しのBさん、Cさんと街を歩いていたAさんは、通りすがりの人に「姫」ちゃんと間違えられて声を掛けられました。BさんとCさんに、「すごい! これからはAちゃんのこと、『姫』って呼んでいい?」と聞かれたAさんは、自分も「姫」ちゃんのファンだったので、「いいよ」と答えました。

それ以来、クラスのみんなもいつの間にか、Aさんのことを「姫」と呼ぶようになりました。ところが、しばらくして、お調子者のDくんが突然、クラスのSNSグループに「私が6年2組の姫で~す(笑)」という文章と一緒に、ひょうきんな顔に加工したAさんの写真をアップしました。クラスメートたちは「面白い!」「Aさんオイシイ!」などと言って盛り上がっていましたが、Aさんはショックでした。

それがきっかけで、Aさんはクラスメートからイジるように「姫」と呼ばれるようになり、「姫、ボケてみてよ」などと、むちゃぶりまでされるようになりました。それを断ると、「つまんねぇ」「空気読めないな」などと言われます。

その後もAさんイジりは広がり、ついには「Aさんが“『姫』似の美少女”と称してアイドルグループのオーディションを受け、結局落ちた」といううその話が、SNSに匿名で投稿され、ネット上に拡散されてしまいました。こんなことがあって「姫」と呼ばれるのが嫌になったAさんは、学校を休みがちになってしまいます

しばらくして、事の一部始終を把握した担任のE先生は、帰りの会でみんなに言いました。
「友だちが傷つくようなあだ名を付けて楽しんでいるのはよくない。みんながこのままなら、あだ名を禁止することも考えるぞ」