学習アプリの導入で
成績は本当に上がった?

 これまで紙でも「フラッシュカード」や「単語帳」のような視覚を利用したツールは、さまざまな実証例などから学習と相性が良いとされていた。それをデジタル環境で進化させ、動画や写真といったビジュアルを多用した学習アプリは、さらに活発に印象付けを促すため、学習効果はさらに高くなると考えられる。

「モノグサ」の効果は、英検の事例が分かりやすいという。その理由は、試験は年に数回行われることで、短期間での習熟度が把握でき比較がしやすいためだ。「これが大学の合格となると、数年かかります。コンテンツの特定ができて、3カ月から半年で効果が出る英検などは、実績として提示しやすいです」と竹内氏。

記憶力は「才能」ではない、子どもの成績を伸ばす“神アプリ”最前線墨田区立錦糸中学校で行われた活用調査の様子。私立だけでなく公立学校への導入も進み、成果を上げている

 私立の中高一貫校の安田学園(東京都)は、2020年3月から「モノグサ」を活用し英語のオンライン学習を始めているが、英検®︎準2級合格率が34%から80%、英検®︎3級の合格率が前年の59%から93%に上がっていた。

 また、英検以外でも評価は高いようである。墨田区立錦糸中学校(東京都)で2021年11月~12月の間に行われた生徒194人を対象にした「モノグサを活用した実証」では、英単語の50点満点のテストで全体の平均点は6.8点から24.9点と約3.6倍に向上。学習進捗とテストの点数を分析すると、強い正の相関が見られた。

学習アプリの進化が
教育イノベーションを起こす

 これまで教育現場で「GIGAスクール構想」や「EdTech」と掛け声だけで過ごしていたところでも、何かしらのデジタル体験を関係者のほぼ全員がせざるをえなかったのがコロナ禍だった。

 結果、どこにいても連絡が取れる、授業ができる、継続的にデータ収集ができる、集めたデータをさまざまな視点で解析し生徒や先生の支援に利用できるなど、有効活用すればもっと便利になるというデジタルツールへの世の中の理解が深まった。しかし、子どもにとって本当にデジタル環境での学びは良いことなのだろか? 

 竹内氏は教育アプリの課題について、「人が教えるメリットを考え、機械との教育体系をどうすみ分けするかが重要」だと語る。覚えたことで世の中の見え方が変わったり、授業の楽しさが分かったり、そういった成功体験が子どもたちに増えることが、教育のあるべき姿だ。その観点では、生徒たちから分かりやすいと喜んでもらえる教育アプリも効果的だろう。「これまでの学校教育の本質と、あまり変わらないのではないでしょうか?」と語る。

 デジタル環境に対応した学校のシステムやプラットフォーム作りは、これからさらに進むだろう。だが、学習アプリは端末画面を前にした独学というよりも、子どもそれぞれに合った学習コーチと捉えるほうが「GIGAスクール構想」の目指すイメージに近いかもしれない。

 これから蓄積されるノウハウが教育アプリに活かされれば、個別最適化にもつながるだろう。子どもそれぞれの持つ「個才」を育むようなデジタル化は、明るい教育イノベーションにつながっていくことが期待される。