赤字の最大の要因は人件費

 赤字の最大の要因は人件費である。たとえば2021年12月期の売上高は50億7748万ドル(約7000億円)もあったが、純損失は2億2141万ドル(約310億円)の赤字だった。人件費の内訳は、運営チームへの報酬を含む「売上原価」=17億9751万ドル(約2517億円)、エンジニアへの報酬を意味する「研究開発費」=12億4670万ドル(約1745億円)、セールスやマーケティング部門の報酬である「販売費」=11億7597万ドル(約1646億円)、役員や管理部門の報酬が大半を占める「一般管理費」=5億8434万ドル(約818億円)であり、これが収益性の足かせとなっていた。

 マスク氏が社員の約半分をいきなり解雇したことが議論を呼んでいるものの、即効性のある経営改善策としては致し方なかったともいえる。今回の一件で、ファイザー、アウディ、フォルクスワーゲン、ゼネラルミルズなど一部の大手企業が広告出稿を見合わせる決定を行った。これはTwitterにとっては無視できない不安材料だが、もし従来の半数の社員で今後同等または多少の減少で売上高を確保できれば、短期間で黒字経営を実現できる可能性は十分にあるからだ。

マスク氏のツイートこのマスク氏のツイートは、いったん解雇した社員2人を呼び戻し一緒に撮った写真とともに「自分が間違っていることを認めることは重要だ。彼らを解雇したことは、まさに最大の過ちの一つだった」と投稿した……という体裁だが、この2人は解雇された社員を装うイタズラでマスコミを賑わせた人物。これは、それを逆手にとったマスク氏のジョークツイートで、裏返せば「間違った解雇はしていない」というメッセージになっている(※編注:Twitterの仕様が現在頻繁に変更されているため、キャプチャした画像を掲載しています)

イーロン・マスク氏が目指す「理想のTwitter」とは

 440億ドルという買収金額は、マスク氏が個人で賄ったものだ。総資産額が2510億ドル(約35兆円)という全米1位の億万長者とはいえ、今回の買収にあたってテスラの株も一部売却するなど、それなりの覚悟をもって臨んだことは明らかである。

 毎日のようにTwitterを通じてメッセージやコメントを連投しているマスク氏が、他のサービスよりも公共性と拡散性があるこのSNSを気に入っていることも確かで、自分が過激な発言をしてもアカウントを停止されることがないように手中に収めたという勘ぐった見方もできなくはない。莫大な資産あっての行動だが、マスク氏は買収提案以前から「Twitterは言論の自由を守っているか?」「ツイートの編集ボタンは必要か?」などの問いをTwitter上で発して、自らの理想を吐露するかのような動きに出ていた。ちなみにこの件に対しては、Twitter上のアンケートで数百万人が反応した。前者(200万人が回答)は7割以上が「いいえ」、後者(400万人が回答)は7割以上が「はい」と答えている。

「ツイートの編集ボタンは必要か?」というマスク氏のアンケートとその結果「ツイートの編集ボタンは必要か?」というマスク氏の問いに対し、73.6%が「はい」と答えている