大学の二極化と親の期待があおる競争激化

「全入時代」を迎えた大学側も、少子化が一段と進む2030年以降に向け、学生確保になりふり構っていられる状況ではない。首都圏の中学受験でも顕著に表れているが、路線の相互乗り入れの進展で、受験生が東京に吸い寄せられる動きが止まらなくなっている。

 大学でも事態は同様で、青山学院大や東洋大、中央大法学部などではキャンパスが東京都心へと回帰している。首都圏では、千葉・埼玉・神奈川の国道16号の外側にある大学で、今後苦戦が強いられていくだろう。

 年内実施の「学校推薦型選抜」や「総合型選抜」への流れは加速し、年明けに学力試験を課す「一般選抜」の受験者数は減少の一途となる。少子化で、年内に入学予定者を確保しなければ「定員割れ」の可能性が高くなる大学は年を追うごとに増えている。いわゆるボーダーフリーとなり、容易に入学可能となる大学の枠が拡大していく。

 一方で、東大を頂点とする「一般選抜」入試は少数精鋭となり、その激しさを増すことになる。入学定員が変わらなければ少子化で入りやすくなるように思えるのだが、これまでは届かなかった有名大学に手を伸ばそうという動きが、保護者にも見られるからだ。

 同世代の人口が多く、厳しい受験状況だった団塊ジュニアのような保護者世代では、自らの入学がかなわなかったような難関進学校に、少子化で子どもが入学できたとなれば、その先の難関大学へと期待は大きく膨らんでいく。こうした保護者心理が、上位層の激戦に輪をかける。合格実績を上げたい中高一貫校・高校と、わが子に過度な期待を寄せる保護者の期待による“競争”は、受験生本人には迷惑なことなのかもしれないのだが。

 このように大学受験は二極分化していく。その比率はおおむね「2:8の法則」に沿うだろう。こうした「2:8の法則」が、受験に限らず、さまざまな局面で見られるようになり、教育力の差が子どもの人生を大きく左右する様相が一段と強まっていく。

 2022年の出生数は80万人を下回る。現在53%の大学進学率が60%に達したとしても、今年生まれた子どもが大学受験をする頃には、2000人規模の大学70校分に相当する14万人の定員が余剰となることが見えている。

 募集停止に踏み切らざるを得ない大学も、地域を問わず増加し始める。少子化に伴う学生の募集困難に限らず、資金面や教員の人材不足、産業構造の転換、高校までの学習状況の変化による大学の役割の喪失といったさまざまな要因によるものになるだろう。

 日本の大学の専門分野別の構成は、募集停止による入学定員という分母の減少と相まって、今後急速に、大きく変わっていくだろう。教育は社会の中にあり、その内容は社会の影響を強く受ける。少子化の中で優秀な人材は引く手あまたとなる中で、大学教員を目指すリスクとコストの面がクローズアップされ、特に自然科学系の基礎研究や人文科学系では、教員の人材不足を生むことになりかねない。このことは、教育研究のみならず社会的にも大きな損失となることがいまから危惧される。