建設族のドンのお膝元で
始まる公共事業ラッシュ
「うれしい悲鳴とはこのことや。関西の業界内じゃ、“和歌山バブル”って呼んでるわ」(地元ゼネコン幹部)
紀伊半島の南西、和歌山県の南部に位置し、風光明媚な海岸線で知られる田辺市。1市4町村が合併しても人口わずか8万人余りの小さな街が、突然にぎわい始めた。
市北部の山沿いに立ち並ぶ巨大な橋脚。これは紀伊半島を貫く近畿自動車道紀勢線の建設現場で、朝早くから多くののダンプカーが砂煙を巻き上げながら列を成して走っている。
「紀伊半島をグルッとつなげる!!」
和歌山3区選出の自民党議員で、建設族のドンとも呼ばれる二階俊博・元経済産業相は、昨年末の総選挙でそう繰り返した。
何をつなげるのか──。民主党時代、無駄な公共事業のシンボルとされてきた高速道路だ。
現在、近畿自動車道紀勢線は、南紀田辺インター(田辺市)~紀勢大内山インター(三重県大紀町)間が、未開通、いわゆるミッシングリンクとなっている。それをすべてつないで開通させようというわけだ。
これは巨大な事業だ。例えば南紀田辺~すさみ間は、2015年度の供用開始を目指し、急ピッチで工事が進められているが、山深い土地だけにわずか総延長38キロメートルの区間に造るトンネルは22本。総事業費は1970億円にも上る。
それだけではない。ひそかに車線拡張の動きも進む。民主党政権下の09年に全面凍結されたはずの御坊~南紀田辺の4車線化事業。その復活を見込んで、測量工事が進められているというのだ。
事業が相次いで進む背景について国土交通省は、「東南海・南海地震による津波発生時の代替ルートなどの役割が期待されている」と説明する。