笹子トンネル事故はなぜ起きたか?
放置された老朽化と甘い管理体制
12月2日、中央自動車道の笹子トンネル内で、重さ約1トンの天井板が110メートルにわたって崩落し、走行中だった車3台が巻き込まれ、9名の人命が失われた。
この事故が、我々に与えた衝撃は大きかった。ある人は、「トンネルが怖くて、もう高速道路は通りたくない」と言う。車で高速道路を通って山梨や長野の温泉やスキー場に出かける人の数は、短期的に3割以上減少するとの予測もある。
今回の事故に関して、2つのことを考える必要がある。1つは、今から30年以上も前につくられたトンネルやダム、橋などの老朽化が進んでいることだ。高度経済成長期につくられた道路や橋などのインフラは、かなり老朽化が進んでおり、笹子トンネル以外にも、事故発生の危険性がある橋梁やトンネルなどが多数残っていることだ。
2つ目は、高速道路などインフラの管理体制の甘さだ。中央自動車道は、2005年に民営化された中日本高速道路株式会社が管理している。この中日本高速道路は、旧日本道路公団から分離され、民営化された株式会社なのだが、実際には、国土交通省などからの天下りが多い。トンネル内の天井板の打音検査の未実施など、管理体制の甘さが指摘されている。
これらの要素を考えると、今回の事故は、わが国が抱える重要な課題を浮き彫りにしたと言える。問題は、それらの課題をいかに解決するかだ。
今までの実績から考えると、政治に大きな期待をかけることは難しい。しかし、インフラやその管理体制については、どうしても政治に頼らざるを得ない部分が多い。我々国民が声を上げることによって、政治がイヤでも動かざるを得ない状況をつくることが必要だ。