ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
スマートフォンの理想と現実

「ドコモは大丈夫なのか?」
ケータイ産業の中の人たちまでが囁く懸念の深層

クロサカタツヤ [株式会社 企/株式会社TNC 代表]
【第43回】 2013年2月8日
著者・コラム紹介バックナンバー
previous page
3
nextpage

この2-3年に何が起きたのか

 では、この2-3年の間に、何が起きたのだろうか。

 まずは言うまでもなく、スマートフォンの台頭そのものである。といってもすでに3年前の2010年6月にはすでにアップルからiPhone4が、またサムスンからギャラクシーS(初代)が、それぞれ発表されている。そう考えれば、スマートフォンの黎明期を超え、本格的な普及期に入ったタイミングだと言える。

 ではサムスンギャラクシーがiPhoneに比べて、普及期に入った日本市場において、競争力に劣る端末だったのか。確かにAndroidOSの混乱などを考えれば、そう言えなくもない面もある。またiPhone4はすでに長年の蓄積があって十分に成熟した端末だったことを考えれば、そうした印象を受ける消費者もいただろう。

 しかし、日本国内におけるサムスンの出荷状況の変遷を振り返ると、そうしたがっぷり四つの激突の結果、ということではなさそうだ。実際サムスンはギャラクシーSを発売するにあたって、日本向け製品だけブランド表記を“Samsung”ではなく“docomo”にしている。日本における韓国製品という特殊な位置づけもあって、プレゼンスは大きく拡大したものの、早々に市場に受け入れられたというわけでは、実はない。

 おそらく消費者の最大の不満は、ギャラクシーも含めて、iPhoneに匹敵するような製品が、いつまで経っても提供されなかったことに集約されるはずだ。それでもドコモという会社へのロイヤリティや通信品質への評価もあって、ドコモの枠内で何か新しいものを触ってみたいと、妥協して機種変更してみたら、これまた不満を感じた、ということなのだろう。

 こうした不満をうまく回収したのが、KDDIのiPhoneだと言える。回線品質に関しては以前からソフトバンクモバイル(以下SBM)への不満の声が高く、いくら値段が安く見えるからといって「安かろう悪かろう」では困る。しかしiPhoneを使う人は周囲に増えているし、アプリやサービスも安心して使えそうで、やはり魅力を感じる――このように考えるNTTドコモユーザーは多かったはずだ。

 こうしたニーズを、LTE対応やMNPのインセンティブ競争のコントロールも含め、うまくすくったのが、KDDIの昨今の成功につながったのだと、私は思っている。すなわちKDDIは、SBMのiPhoneユーザーを奪っただけでなく、むしろ本当に草刈り場としたのは、「保守的だが新しいものを使いたい」と考えていたドコモユーザーだった。そしていま彼らは、iPhoneの勢いを、HTC Jのような他の端末にもつなげている。彼らが目下順風満帆のように見えているのは、私だけではあるまい。

previous page
3
nextpage
IT&ビジネス
クチコミ・コメント

facebookもチェック

クロサカタツヤ
[株式会社 企(くわだて)代表取締役、慶應義塾大学特任准教授]

1975年生まれ。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修了後、三菱総合研究所にて情報通信分野のコンサルティングや国内外の政策調査等に従事。その後2007年に独立し、現在は株式会社企(くわだて)代表として、通信・メディア産業の経営戦略立案や資本政策のアドバイザー業務を行う。16年より慶應大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。


スマートフォンの理想と現実

2011年はスマートフォンの普及が本格化する年になる…。業界関係者の誰しもがそう予感していた矢先に発生した東日本大震災は、社会におけるケータイの位置づけを大きく変えた。しかし、スマートフォンの生産に影響が及びつつも、通信事業者各社はその普及を引き続き目指し、消費者もまたそれに呼応している。震災を受けて日本社会自体が変わらなければならない時に、スマホを含むケータイはどんな役割を果たしうるのか。ユーザー意識、端末開発、インフラ動向、ビジネスモデル等、様々な観点からその可能性と課題に迫る。

「スマートフォンの理想と現実」

⇒バックナンバー一覧