無理難題を巧みにかわす
「検討します」と「研究します」

 次に紹介するのは、議員からの提案や意見をかわす「返答術」だ。

 一般読者にはなじみが薄いかもしれないが、答弁書を作成したり、議会の準備を行ったりといった行政のサポートも自治体職員の仕事の一つだ。部長・課長クラスになると、議会で答弁を任されることもある。

 こうした仕事において、議員の急な提案や無理難題に、公務員はどんな言葉で応じるのか。本書では3つのバリエーションを紹介している。

 一つ目は「検討します」。これは「実施の可能性が少しでもある」場合に用いるのだという。提案されて「実施します」と返せるケースは、役所の場合はほとんどないので、「検討します」は、自治体として最大限の前向きな答弁なのだそうだ。

 前向きな姿勢を示しつつも、明確にYesと言っているわけではないので、その場をやり過ごすテクニックとして紹介に値するだろう。

 ただし、経験の長い議員であれば、この「検討」に「ちょっと時間を稼ぎたい」という意図が隠されていることがわかってしまう。

 手練れの議員は「検討します」と言われたら、「その後、検討状況はどうか」と追及することができる。公務員の側は、その追及に答えられるよう準備しておかなければならない。

 二つ目は「研究します」だ。この場合、実現の可能性は「未知数」となるらしい。後日、議員から「その後どうなったか」と聞かれたら「まだ研究しています」で許される。実質的には「棚上げ」だ。

 三つ目は「長期的な課題と認識しています」。これは「確かに、その提案や意見はわかるけれども、すぐにやる必要はない」というニュアンスである。緊急性、重要性が低いと判断され、実現の可能性は乏しい。

 3つとも、相手の提案や意見を否定してはいない。特に二つ目と三つ目は、受け止めてはいるものの、実際は「棚上げ」なので、うまくかわしているようなものだ。

 ちなみに番外編として「ご意見として承ります」「それも考え方の一つと認識しております」というのもあるそうだ。わかると思うが、これらは完全なる「スルー」である。提案や意見があまりにも調子外れなときなどに使われるという。

 こうした決まり文句のような答弁は「合言葉」のようなものだろう。公務員は、その場で一生懸命考えて答弁する必要がなく、状況に応じて3つの中から選べばいい。的を射ていない質問や無理難題をさらりとかわすことで、重要な業務に専念できる。

 議員の側も、相手の受け止め方がその場ですぐにわかり、時間と思考の節約になるというわけだ。