デジタル社会の実現に向けて、データを有効に活用してビジネスに生かすこと、またデータそのものの信頼性を担保することは、人々の暮らしをより豊かなものにするとともに、企業においては競争優位性獲得の観点から重要な課題となる。デジタル社会の実現をリードするデジタル庁の村上敬亮統括官、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援するオービックビジネスコンサルタントの和田成史社長、資本市場の信頼性向上をデジタル監査で支えるEY新日本有限責任監査法人の片倉正美理事長が、人口減少時代におけるデータの重要性と、これからの日本が目指すべき方向性=共助のモデルについて語り合った。
人口が減れば減るほど、デジタルとデータが重要に
――人口減少に伴い、地域の暮らしを支えるサービスが危機的状況に陥る中で、データ活用の重要度が増しているとのことですが、身近な実例を教えてください。
村上 デジタルのトップエンジニアでありながら、牛乳配達が自分の本業だとおっしゃっている、ある地方の方から、こう教わりました。
「A地区の牛乳配達が人口減少でお客さまが減り事業を続けられなくなった。その営業譲渡を受けたB地区の業者さんも、B地区単独時代よりさらにお客さまの密度が下がり、事業継続が困難に。そしていずれも、C地区の自分が引き受けることになった。
確かに担当エリアは広がったが、顧客密度は薄くなり事業はますます非効率化。でも、水道がないA地区山間部では、1日1回飲料水が届くかどうかが死活問題。B地区にある多くのお子さんを預かる児童社会福祉施設にとっても、子どもたちが大好きな乳酸飲料を届けてくれる牛乳配達は欠かせない。よって、自分は、どんなに苦しくても、やめるにやめられない」
実は、医療、教育、モビリティをはじめ、地域の暮らしを支えるさまざまなサービス全てが、牛乳配達と同じ構造に陥っています。そしてもし、顧客密度の減少が限界に達し、一つ、また一つとサービスがなくなっていけば、地域の暮らしは成り立たなくなるでしょう。地方の暮らしの維持に向け、やるべきことは一つ、デジタル化とデータの利活用です。
人口減少という避けられない課題に対して、社会や企業はどう対応していくべきか。次のページでは課題解決の鍵となるデータ活用・連携の重要性について解説していく。