アラン・ドロンの看板も寒そう
財政破綻した夕張市の「今」

 新千歳空港を午前10時10分に出発した高速バスは、1時間半ほどで終点「ゆうばりホテルシューパロ前」に到着した。バスを降りたのは、わずかに2名。

 小雪がちらつく中、夕張市役所を目指して歩き出す。人影はなく、ほどなくして古い名画の看板が目に入った。アラン・ドロンの『太陽がいっぱい』だ。封切り当時のポスターが巨大な看板となって、店舗の庇の上に掲げられていた。

 どこか寒そうなアラン・ドロンの姿を見て、懐かしさを感じた。そして、夕張市にやってきたことを強く実感した。この看板の下を以前、何度も行き来していたからだ。

 夕張市の財政破綻が表面化したのは、今から7年前の2006年の夏。巨額の債務を抱えながら、不適切な会計処理で隠蔽していたことが発覚し、夕張市民のみならず日本中が驚愕した。夕張は「炭鉱のまち」から「観光や映画のまち」への転換に成功し、成果を上げていると思われていたからだ。

 過疎化や高齢化、人口減少や地域経済の衰退に苦しむ地方の小規模自治体にとって、言わば「希望の星」のような存在だった。それだけに、夕張市の財政破綻は大きな衝撃となり、全国に広がった。

 夕張市は07年4月から財政再建団体(その後、財政再生団体に移行)となり、国の管理下に置かれることになった。市が抱えていた負債総額は約632億円。このうち通常の市債残高を除いた360億円を、20年程度で返済する計画が立てられた。

 その後、18年間(2026年度まで)で353億円を返済することになり、現時点での残高は322億円。財政再建の険しい途上にある。

 夕張市の人口は現在、約1万人。破綻後の6年間で3000人近く減少し、ピーク時の1割以下となっている。約45%の高齢化率は全国トップで、15歳未満の人口比率は全国最低だ。