日本は「ルール優先」で
海外は「お客優先」ではないか

 この違いは一体どこから来るのだろうか?ということを考えてみた。思うに日本の場合は「ルール優先」、海外の場合は「目の前のお客優先」ということではないだろうか。

 日本のようにルールが決まっていて、その不便さを「誠に申し訳ございません」と丁寧に対応する方がオペレーションは効率的だろうし、顧客への対応も不平等がなくなる。全てのお客様に公平に、しかしながら顧客の要望は抑えてもらい、丁寧に対応するのが日本流なのだろう。前述のように食事時間が決まっていれば、それなりの割り当てと配膳のオペレーションが可能になるから混乱はしない。

 一方、外国のように好きな時間に行けば良い、ということになると顧客の満足度は高くなる。しかしながらレストランに行ったのは良いものの、いっぱいで入れないということも起こり得る。お客の意向優先ということは、場合によってはお客が我慢しなければならないケースも生じ得るということなのだ。

 したがって、外国の場合、日本人から見ると「オペレーションが結構、いい加減というかテキトーではないか?」と思える部分も出てくる。 

 すなわち外国の場合はたとえギクシャクすることがあったとしても可能な限り“お客が今、要望していること”をかなえることをまず優先するという考え方だろう。

 これに対して日本の場合は、そういうギクシャクに対してお客の方も許容度が低く、ちょっと段取りが悪かったりするとすぐ怒り出したりする人もいるから、みんなに少しずつ不便はあったとしても“ルール通り”を優先するということになるわけだ。

 これはビジネスという観点から見た場合、それぞれ一長一短があって、どちらの方が絶対に良いということはいえない。しかしながら接客業ということの本質を考えると、日本の場合「まず目の前のお客の意向を優先する」ということにもう少しかじを切ってもいいのではないだろうか。

 無論、そのためにはホテルや観光業におけるサービス提供側だけではなく、顧客側の意識を変えることも必要だろう。仮に多少の行き違いがあっても、それはある程度仕方ないといえるような鷹揚さがなくてはサービス提供側の変化は起こらない。

 コロナ禍が一段落し、日本から海外に出る人はまだ少ないものの海外からの観光客は急増してきている。現在はまだほとんどいないが、いずれ中国からの観光客が戻ってくれば、相当にぎわうことになるだろう。

 日本が「おもてなしの国」だというのであれば、単に愛想が良いだけではなく、もう少しサービス提供者と顧客の関係を互いに考えてみるべきなのではないだろうか。