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生活保護のリアル みわよしこ

日本の生活保護を海外と比較することは妥当か?
格差社会アメリカ・ボストン市で見た貧困層の実態

――政策ウォッチ編・第15回

みわよしこ [フリーランス・ライター]
【政策ウォッチ編・第15回】 2013年2月22日
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日本の生活保護基準が「高すぎる」とされる時、比較の対象とされるのはOECD諸国の公的扶助水準である。なかでもアメリカは、日本では、公的扶助水準が低い国として知られている。

今回は、アメリカ・ボストン市で見た、困窮者の生活とその周辺の断片のいくつかを紹介する。そこには、日本とは異なる公的扶助・支援の諸相がある。

各国ごとに異なる公的扶助は、単純に比較できるものであろうか?

日本の生活保護基準は
「米国並みに下げる」べきか?

ボストン市中心街を大きなカートを押しながら進む、50代と思われるホームレス女性。女性のホームレスが厳冬期の夜を安全に過ごせる場所は数少ないという

 日本の生活保護基準は、金額を国際的に比較した時には、決して世界的に低い水準にはない。日本よりも高い国を探す方が大変なほどである。このことを根拠に、

 「日本の生活保護基準は高すぎるから、引き下げて先進諸国並みにすべき」

 という意見が数多く見られる。この時、金額以外の要因が考慮されることは少ない。

 また、日本の捕捉率(注)は、決して高くない。このこともまた、

 「一人あたりの生活保護水準を引き下げれば、必要な人が全員、生活保護を利用できるようになる」

 という主張の根拠とされる。たとえば日本の捕捉率が20%であるとすれば、生活保護費の総額を変えずに貧困状態にある国民全員に扶助を行うためには、生活保護費を現在の20%まで引き下げればよい計算になる。

 このとき、引き下げてよい根拠としてしばしば引用されるのは、アメリカの制度である。

 本稿を執筆している2013年2月19日現在、筆者は学会への参加・取材のために、アメリカ・ボストン市(マサチューセッツ州)に滞在している。ボストンは、2月上旬のブリザードで積もった雪が未だ充分に除雪されておらず、学会会場と宿舎との往復にも難儀する状況ではある。しかし駆け足ながら、現地の貧困事情も見聞している。

 今回は予定を変更し、ボストン市の困窮者をめぐる事情のいくつかについてレポートする。

(注)公的扶助を利用している人数を、貧困状態にある人数で除したもの。日本では、20%前後と推定されることが多い。

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みわよしこ [フリーランス・ライター]

1963年、福岡市長浜生まれ。1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。東京23区西端近く、農園や竹やぶに囲まれた地域で、1匹の高齢猫と暮らす。日常雑記ブログはこちら


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急増する生活保護費の不正受給が社会問題化する昨今。「生活保護」制度自体の見直しまでもが取りざたされはじめている。本連載では、生活保護という制度・その周辺の人々の素顔を知ってもらうことを目的とし、制度そのものの解説とともに、生活保護受給者たちなどを取材。「ありのまま」の姿を紹介してゆく。

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