マルチパスウェイプラットフォームとは?
他に類のない異形水素タンクに注目集まる

 まずは、トヨタテクニカルワークショップ2023から振り返る。

 朝10時から夕方6時まで、各種の実車を運転したり、同乗走行したり、また次世代の全固体電池の実物を見たりと、メディア側の予想をはるかに超える盛りだくさんの情報が提供された。

 その模様はすでに、多くのメディアがさまざまな観点から記事化している。

 また、トヨタの企業ホームページでも、同日の模様として、トヨタの技術開発を統括するCTO(最高技術責任者)で副社長の中嶋裕樹氏、次世代バッテリーEV戦略/BEVファクトリープレジデントの加藤武郎氏、そして水素事業戦略/水素ファクトリープレジデントの山形光正氏のプレゼンテーションが動画サイトを介して紹介されているところだ。

「トヨタテクニカルワークショップ2023」で初公開された、水電解による水素製造装置の技術展示「トヨタテクニカルワークショップ2023」で初公開された、水電解による水素製造装置の技術展示 写真提供=トヨタ自動車

 燃料電池の主要構成品である、トヨタがいう第三世代のFCスタックや、さまざまな形状をした水素タンクの画像については残念ながら未公開としている。取材当日も東富士研究所内での撮影は一切禁止されていた。

 水素タンクについて開発担当者は「これまで水素タンクといえば円筒型が当たり前だったが、マルチパスウェイプラットフォームでの活用を前提とすれば、こうしたドライブシャフトをまたぐ鞍型の発想が出てくるのは当然だ」と指摘した。

 マルチパスウェイプラットフォームとは、「多様な電動車の提供を可能にするプラットフォーム」と、トヨタは定義している。

 現実的には、トヨタが量産しているTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)をベースとして、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車に加えて、BEV化や水素を使用する乗用車への転用を可能とする考え方だ。

 トヨタとして、燃料電池車の多様性と水素燃料車の量産に向けた“技術の弾込め”が着実に進んでいることを、筆者は同テクニカルワークショップで実感した。