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岸博幸のクリエイティブ国富論

得をするのは弁護士と消費者団体だけ?
日本版集団訴訟制度の法制化への懸念

岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
【第218回】 2013年3月1日
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 米国の集団訴訟(クラスアクション)と似た制度を日本に導入し、日本でも同一案件で多数の消費者が被害を受けた場合の被害回復を可能としようという動きがあります。消費者庁はそのための法律案を来月下旬に国会に提出しようとしていますが、この法律案には問題が多いのではないでしょうか。

米国とは大きく異なる
制度の概要

 もちろん消費者庁が導入しようとしている制度は、米国のものとはだいぶ異なります。米国の集団訴訟制度は、1人または数名の者が、共通の被害を受けた一定範囲の人たち(クラス)を代表してその全員のために原告として訴訟を起こせる仕組みとなっています。

 これに対して、消費者庁が日本で導入しようとしている制度は、法案の詳細は明らかになっていませんが、これまで検討されてきた“集団的消費者被害回復に係る訴訟制度”がベースとなっているなら、以下の二段階型の訴訟制度となります(集団的消費者被害回復に係る訴訟制度案の概要)。

① 共通義務確認訴訟

 (国から認定された)消費者団体が、企業が多数の消費者に及ぼした被害を回復させる(金銭を支払う)義務を負うことを確認する

② 個別の消費者の債権確定手続き

 企業が被害回復の義務を負うことが確認されたら、その旨を消費者に広く通知・公告し、それに応じて申し出た被害者の授権に基づいて消費者団体が裁判所で債権(企業の金銭支払い義務)を確定させる

 消費者庁の説明では、個々の消費者が訴訟で被害回復を図るのは困難である一方、新たな制度は米国の集団訴訟制度の問題点(被害者なら誰でも訴訟でき、対象となる問題も限定されていないなど)も踏まえており、米国のように訴訟が濫発される可能性はないとなっていますが、本当にこうした制度を日本で導入するのが望ましいのでしょうか。

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]

1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス・マーケティング株式会社取締役、エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社顧問も務める。

 


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