自動車整備業界という観点で見ると、自動車市場がバブル経済崩壊後にかけて成熟化する中で、新車販売・中古車販売・整備・リサイクルなどのバリューチェーンにおける顧客の囲い込みの重要性が増してきたことで、大きな変化が生じた。

 そもそも、一口に自動車整備と言っても、道路運送法で定められたエンジンなどの取り外しを含む高度な整備である「分解整備」と、板金塗装などを行う「車体整備」がある。

 従来は車検整備を中心とする分解整備は、国土交通省から認証工場、指定工場(民間車検工場)の資格を取得した整備事業専業企業と自動車ディーラーのサービス工場が中心の担い手であり、板金塗装などを行う車体修理工場とは「すみ分け」がなされていた。

 実際、分解整備事業の団体が各県ごとの「自動車整備振興会」と中央に「日本自動車整備振興会連合会(ニッセイレン)」として約9万の事業場を擁する一方で、車体整備業界としては全国団体の「日本自動車車体整備協同組合連合会(ニッシャキョウレン)」が4500の車体整備事業者を抱えており、業界団体は分かれている。

 かつては車体整備業が、分解整備を行う整備専業事業者・ディーラーの“下請け”として位置付けられていた。しかし、クルマ市場がストック中心の“保有ビジネス”へと移行したことや自動車の電動化が進む中で、ディーラーによる顧客の囲い込み強化と中古車販売・カーリース事業者などの「総合整備化」が進む流れが生まれたのだ。

 こうした総合化の潮流が、国内自動車販売に関わる事業者が生き残り策を講じる中で、保険の取り扱いも含めた業容の拡大を促進し、保険会社との密接な関係を形作っていく要因となったといえるだろう。