いま、イェール大学の学生たちがこぞって詰めかけ、夢中で学んでいる一つの講義がある。その名も「シンキング(Thinking)」。AIとは異なる「人間の思考」ならではの特性を存分に学べる「思考教室」だ。このたびその内容をもとにまとめた書籍、『イェール大学集中講義 思考の穴――わかっていても間違える全人類のための思考法』が刊行された。世界トップクラスの知的エリートたちが、理性の「穴」を埋めるために殺到するその内容とは? 同書から特別に一部を公開する。

【クイズ】「2、4、6」「4、6、8」「3、5、7」に共通の意外な法則とは?

「3つの数字」に共通の法則を答えよ

 これから3つの数字を提示する。その順序に隠されたシンプルな法則を見つけてもらいたい。

 法則はあくまでも数字の順序、つまりは3つの数字の関係を表すものとなる。

 どうやって法則を見つけるかというと、自分で考えた3つの数字を出題者に伝えるのだ。すると出題者が、その並びが法則に当てはまるかどうかを答える。この確認は何回行ってもよい。

 そうして法則がわかったと確信したら回答する。すると、出題者はそれが正解かどうかを発表する。

 それでは始めよう。

 法則に当てはまる3つの数字の並びは「2、4、6」だ。

 さて、どんな3つの数字の並びを試すだろう。

 この問題を出題したときに起こる典型的な例を紹介しよう。マイケルという名の学生にこの問題を出題したとする。マイケルは「4、6、8」と言い、私はその並びは法則に当てはまると答える。すると、マイケルは法則がわかったと思い込み、「簡単すぎですよ」と言い、「法則は、2ずつ増えていく偶数です」と答える。

 だが、私は彼に不正解だと告げる。

簡単なようで間違える

 マイケルは自説を振り返り、「ならば、偶数に限らず、2ずつ増えていく数字が答えではないか」と考える。この説に満足し、「3、5、7」の並びを伝え、法則に当てはまるはずだと期待する。実際、私の回答は「当てはまる」だ。マイケルはさらに念を入れ、「13、15、17」の並びも問いかけ、これも法則に当てはまる。

 すると彼は意気揚々と、「2ずつ増えていく数字!」と回答する。

 だが私は、その答えも違うと告げる。

 マイケルはSAT(大学進学適正試験)の数学で満点を獲得しており、正解を出せないことに彼のプライドは激しく傷ついている。そして再度チャレンジする。

マイケル:‒9、‒7、‒5
:当てはまります。
マイケル:なるほど。では、1004、1006、1008は?
:当てはまります。
マイケル:えっ。本当に「2ずつ増えていく数字」じゃないんですか?

 マイケルがしたことは、ピーター・C・ウェイソンの有名な「2-4-6課題」に挑むほとんどの人と同じだ。マイケルは自説を確かめるにあたり、自説が正しいと証明する証拠ばかりを集めているのだ。

 自説を裏付ける証拠となるデータはたしかに必要だが、それだけでは十分ではない。

 その仮説の反証も試みる必要がある。

「最初の考え」に固執しているから間違える

 それでは、法則に当てはまった数字の並びを使い、具体的に何をすればいいのか見ていこう。これまでに登場した数字の並びは以下のとおりだ。

2、4、6
4、6、8
3、5、7
13、15、17
‒9、‒7、‒5
1004、1006、1008

 いずれの並びにも当てはまる法則は、はっきりいって無限にある。「桁の数が同じで、2ずつ増えていく数字」「2ずつ増えていく‒10より大きい数字」「2ずつ増えていく‒11より大きい数字」……このように、挙げていけばきりがない。

 すべての仮説を検証することはできないが、いずれの数字の並びにも当てはまる法則の候補がたくさんあるときに、真っ先に頭に浮かんだ仮説に固執していては、この問題の正解はいつまでたっても見つからない。

 マイケルもそのことに思い至り、別の法則を探り始める。

「同じ数だけ増えていく数字」はどうか。最初に考えた仮説が間違っていることを確認するとともに新たな仮説を検証するために、今度は「3、6、9」という並びを提示する。私は「当てはまる」と答える。

マイケル:わかりました。では、4、8、12はどうです?
:当てはまります。
マイケル(バカではないといわんばかりに大げさな方程式を持ち出して):わかりました。答えは、任意の数字xに定数kを加える「x+k」ですね。
:違います。

 こちらの仮説に関しても、マイケルは反証を試みるべきだった。苛立ちが募るなか、彼は適当に3つの数字を並べる

「では、4、12、13はどうです?」とマイケル。

 私は笑顔で「イエス」と告げる。その並びは法則に当てはまる。

「はあっ?」

 これこそがマイケルに必要な確認だった。この瞬間、彼が試していた仮説が打ち破られたのだ。しばらく熟考したのち、マイケルは「5、4、3は?」と尋ねる。

 私は否定の意味で首を振る。この並びは法則に当てはまらない。

 今度はかなり謙虚な様子で、マイケルが恐る恐る回答を口にする。

「もしかして、前の数字より大きい数字であれば何でもいいんですか?」

 ようやく私は答える。「はい、正解です」

人は論理的でも合理的でもない──「確証バイアス」とは何か?

 ピーター・C・ウェイソンは英国の認知心理学者で、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンで研究を行っていた。いまや有名となったこの「2-4-6課題」を1960年に考案し、自ら「確証バイアス」と名づけたバイアスの存在を初めて実験的に証明した。

 確証バイアスとは、人が「自分が信じているものの裏付けを得ようとする」傾向のことを指す。

(本稿は書籍『イェール大学集中講義 思考の穴――わかっていても間違える全人類のための思考法』から一部を抜粋して掲載しています)