李克強前首相死去で当局は「第3次天安門」警戒…それでも習近平体制が揺るがない4つの理由ゼロコロナ政策への反対デモでは習近平国家主席や共産党に対して批判が浴びせられ、当局の危機感が高まった Photo:AFP=JIJI

李克強前首相の急死を受けた中国政府の対応は、社会の不安定化につながらないよう配慮したものだった。不動産不況は深刻だが、中国を「異質な専制国家」視しては習近平体制を見誤る。(ジャーナリスト 岡田 充)

李克強前首相の早すぎる死
香港紙の速報は当局のリークか

 李克強前首相急逝の情報を伝えたのは、香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」だった。

 10月28日付の紙面で、李氏は中国・上海の党幹部用ホテル、東郊賓館で水泳の最中、心臓発作を起こし上海中医薬大学附属曙光医院に搬送され、遺体は27日に北京に運ばれたと詳細に伝えた。同紙によると、李氏はかつて冠動脈のバイパス手術を受けたという。

 死去の詳細な情報を素早く報じたのは、急死を巡る「うわさ」が独り歩きしないよう中国共産党中央委員会が香港紙に流したのだろう。

 68歳という早すぎる死と、民間経済セクターを重視し、経済政策を巡る習近平国家主席との「確執」によって権限を削られた背景を結び付け、中国版SNSの「微博」には「闘争はこんなにも激しいのか」などとする書き込みが次々と現れた。

 李氏の故郷、安徽省合肥の旧居には急逝を悼んで1万人を超す民衆が訪れた。

 こうした動きに、当局側はネット書き込みを規制するなど神経質な対応に追われ、共産党当局は27日夜、国務院(政府)などと共に、李氏を「人民に誠心誠意奉仕した一生」と賛辞を込めた訃告を発表。死去が社会の不安定化につながらないよう手厚く対応する姿勢を見せた。