中高一貫「香蘭女学校」が立教学院グループの一員として目指すもの戦前、現校地に移転してきて以来の校門と校舎に続くアプローチ

ミッションスクールの中でも、聖ヒルダと呼ばれる香蘭女学校はユニークな存在で、英国国教会直系のアングリカンコミュニオンの信仰を持つ。立教大学(聖ポール)や聖路加国際大学(聖ルカ)も日本聖公会の一員だ。その香蘭がいま一番重要視しているのは、生徒のライフデザイン教育なのだという。(ダイヤモンド社教育情報、撮影/平野晋子)

中高一貫「香蘭女学校」が立教学院グループの一員として目指すもの

鈴木  弘(すずき・ひろし)
香蘭女学校中等科・高等科校長

 

1952年生まれ。76年東京学芸大学卒業後、数学科教員として立教中学校に。2009年立教池袋中学校高等学校校長を経て、17年より現職。私立中高協会常任理事、東京私学財団理事、Canadian International School常務理事、立教大学評議員、聖路加国際大学評議員。

 

 

 

進路指導の前にライフデザイン教育

――アニメ化された映画『窓際のトットちゃん』が公開される黒柳徹子さんも、本校の卒業生だそうですね。

鈴木 空襲で校舎が焼失し、九品仏浄真寺(世田谷区)の仮校舎時代に在籍されていました。最近出された『続 窓際のトットちゃん』(講談社)の中に、香蘭の想い出がつづられています。その中には、記憶に残っていたという校歌1番末尾の「咲くはわが身のつとめなり」という句も記されていました。

 黒柳さんには、少女たちの成長のための教育環境をより良くしていくためにということで、香蘭女学校維持後援会の会長を創設時の2011年からお願いしています。

――それは頼もしいですね。校風というのはいかがでしょう。

鈴木 この学校のユニークさといいますか、これが伝統というものなのか、着任してから7年たったいまも理由が分からないところもありますが、都心部の学校なのにあか抜けているというか派手な感じもなく、少し奥手で、本当に実直な生徒が集まっているように思います。本をすごく読みますし、勉強を頑張る子が多い。

――キリスト教の学校ですから、1人1人異なる神から賜った贈り物(ギフト)を育てていくということが教育の中心になるのでしょうね。

鈴木 三つの教育目標があります。「神様から与えられたひとり一人異なる賜(ギフト)を引き出す」。そして、そのみな違う人たちと「共に生きる力を育てる」。そして、中高の思春期の女子の心と体の成長に寄り添った「女子教育」です。

 私立学校も、ともすれば文部科学省の言葉に踊らされてしまうようなところがあります。しかしキリスト教学校は、もっと聖書の下、人間にとって普遍的な教育に取り組んでいかなければなりません。創立時から、平和の使者を世の中に送り出すことが大きな目標の学校だと思います。

――具体的にはどのような形になりますか。

鈴木 いま一番重要視しているのはライフデザイン教育です。それは単なる進学指導ではありません。どうすれば、その生徒が、女性として自分らしく生きていけるのか、そのことに目覚めさせ自分の将来を描いていく、そして夢と希望をもって人生を生きていくためのものです。

 具体的には、「卒業後に出て行く社会がどのような社会なのか」を知るため、外部の方による講演会を企画したり、成長に合わせ学年ごとにホームルームで女性のライフデザインに取り組む活動を実施しています。

 芸術関係でも、アニメですぐにもデビューできそうな生徒さんもいます。海外で活躍したいから海外大学に進学したいという生徒さんもいます。中学生ですがゴルフの全国大会優勝者もいます。医学部や工学部は立教大にはありませんから、他大学を目指す生徒さんもいます。その結果、実質内部進学率が下がったとしても、香蘭の教育としては成功だと思います。この学校で自分の賜物を見つけ自信を持って世に出てほしい。

――生徒が行きたい学部学科は、男子校と比べて差があるものでしょうか。

鈴木 男子校と比べてもそれほど差があるようには思いません。ただ、担当学年の先生方の影響で、ある特定の学部学科に偏る傾向が出るのは仕方ないと思っています。

中高一貫「香蘭女学校」が立教学院グループの一員として目指すもの校内の至る所に日本聖公会の息吹を感じることができる