キシダノミクスPhoto:NurPhoto/gettyimages

デフレ脱却というスローガンに
振り回された25年

 日本銀行の植田総裁は、この25年間を「物価の安定」に向けた「闘いの歴史」と位置付けて多角的なレビューを行っている。この期間は、日本の経済政策が「デフレ脱却」というスローガンのもとに総動員された時期でもある。

 安倍首相によるアベノミクスの時はもちろんだが、岸田首相も「デフレ完全脱却のための総合経済対策」をまとめたところだ。一方で、今や物価が2%の目標を超えて上昇を続け、政府もインフレの悪影響を防ぐために物価高対策を打ち出している。それでもデフレ脱却というスローガンを止められない。

 しかし、デフレ脱却という言葉が意味するところは、物価動向の変化に合わせて変わってきている。90年代後半にデフレという言葉がよく使われるようになったころ、デフレは持続的な物価の下落という意味で使われていた。そしてデフレ脱却とは物価を上げることであった。

 経済の停滞状態も含めてデフレと呼ぶこともあったが、物価が下落することが経済活動を停滞させると考えられていたので、デフレは持続的な物価下落と定義しておけば事足りた。一方、物価が上昇するようになれば経済も同時に活性化すると考えられた。