みなさんは、世の中のちょっとした変化に敏感でしょうか。
数字に強い人は、ちょっとした変化に「違和感」を感じ、自分で仮説をたてて、その理由を数字で考えていきます。
経営コンサルタントとしてこれまで2000社の財務分析、1000人以上のビジネスパーソンに会計セミナーを実施してきた平野薫氏は、①世の中の事象に違和感を持つ→②違和感にフォーカスする→③自分なりに仮説を立てる→④数字で根拠を分析し検証する→⑤人に話したりブログに書いてアウトプットする、という一連のルーティンを日々継続して行うことが数字に強くなるコツだと言います。まずは、「違和感」を放置せずフォーカスすることが大切なのです。
本連載では、「世の中のふとした疑問を数字で考えるエピソード」が満載の話題の書籍『なぜコンビニでお金をおろさない人はお金持ちになれないのか?』から一部抜粋し、数字に強くなるエッセンスをお届けします。

なぜつけ麺は大盛無料でも儲かるのか?Photo: Adobe Stock

ラーメンの大盛は有料なのに、つけ麺の大盛は無料?

 つけ麺のルーツは諸説ありますが、大勝軒の故・山岸一雄氏が残った麺をスープの入った湯飲みで食べていたまかない料理を1955年に商品化したというものが定説になっています。当初、知名度は低かったものの2000年代中盤頃からつけ麺ブームが始まり、「ラーメン・つけ麺・僕イケメン」というギャグが生まれるほど全国的に浸透していきます。

 私が初めてつけ麺を食べたのは2007年。当時、転職のために引っ越した家の近所にあったラーメン店でのことです。メニューを見ていると、あるキーワードに惹かれました。

「つけ麺大盛無料」

 一般的にラーメン店で大盛を注文すれば追加料金が発生します。それなのに、大盛が無料だなんて何という太っ腹な店主なんだと思い、20代で糖質のことなど気にしていなかった当時の私はそのお店に足繁く通っていました。

 しかしその後、つけ麺ブームに乗って多くのラーメン店がつけ麺を扱うようになり、他の多くの店でもつけ麺は大盛が無料であることが分かりました。私が通っていた店だけ特別気前が良かったわけではなかったようです。

 それではなぜ、つけ麺は多くの店で大盛が無料なのでしょうか?

つけ麺は大盛にしても原価の高いスープのコストが上がらない

 それはラーメンの原価構成に秘密があります。ラーメンの売上に占める原材料費の比率は30~35%と言われていますが、原材料の中で最もお金が掛かっているのが実はスープです。最近は1000円を超えるラーメンも増えてきましたが、これはこだわりのスープを作っているお店が増え、コストが上がっていることも要因です。

 つけ麺の場合、スープの量がラーメンと比べて圧倒的に少ないため元々コストを低く抑えることができます。一方で、スープを飲まないため食べ応えと満足感が少ないということもあり、麺の量が多いお店がほとんどです。ラーメンだと麺の量が150g程度ですが、つけ麺だと300gが一般的です。また大盛にした場合、ラーメンはコストの高いスープも麺に合わせて増量しないといけませんが、つけ麺の場合は麺だけで良いのでそこまでコストアップになりません。

 ラーメンのスープの種類や仕入先、こだわりの原料などで原材料費は変わりますが、一般的なラーメンとつけ麺の原材料費は下記のようになります。

●ラーメンの原価構成(例)

ラーメン普通盛(麺150g)麺45円 スープ100円 トッピング60円 原価合計205円
ラーメン大盛(麺230g)麺70円 スープ150円 トッピング60円 原価合計280円

つけ麺普通盛(麺300g)麺90円 スープ50円 トッピング60円 原価合計200円
つけ麺大盛(麺400g)麺120円 スープ50円 トッピング60円 原価合計230円

 このようにラーメンと比べてつけ麺は大盛にしてもラーメンほど原材料費が上がりません。大盛を無料にすることでより多くのお客さんに来てもらえることを考えれば、そこのコストアップは吸収しようというのがつけ麺の基本的な戦略です。事実、大盛無料のお店では多くのお客さんが大盛を注文しています。

 しかし昨今、ロシアのウクライナ侵攻の影響もあり小麦粉の価格が高騰しています。もしこの相場が続けば、従来のつけ麺の戦略も転換を迫られる可能性があります。

なぜつけ麺は大盛無料でも儲かるのか?イラスト/春仲萌絵

(本原稿は、平野薫著なぜコンビニでお金をおろさない人はお金持ちになれないのか?を抜粋、編集したものです)