【実例】習い事で子どもの「燃え尽き症候群」を防ぐシンプルで強力な方法写真はイメージです Photo:PIXTA

「子どもの燃え尽き症候群は、予防できる」そう語るのは、日米で学習塾を経営し25年間で延べ5000名以上のバイリンガルを育成しているTLC for Kids代表の船津徹氏。「こんなにも具体的で内容が詰まっているものは初めて!」「目からウロコ」と子育て世代に話題の新刊『「強み」を生み出す育て方』の中から、25年間の塾経営でたどり着いた【燃え尽き症候群の予防法】をお届けする。

子どもの燃え尽き症候群は予防できる

 親が長期的なゴール設定を行い、習い事を高いレベルに引き上げることに成功した事例として、私がアメリカで出会ったアスリート家族をご紹介しましょう。

 その家族は父親も母親もNCAA(全米大学体育協会)で活躍したアスリートで、子ども(男の子)もスポーツで奨学金を得て大学へ進学させたいと考えていました(アメリカの大学は返済不要のスポーツ奨学金が充実しており、技能の高い選手は学費や生活費が免除されます)。父親はテニスとバスケットボールの選手、母親は水泳の選手でしたが、子どもには5歳からテニスとバレーボールを本格的に習わせました。

 親が2つの球技を選んだのには理由があります。テニスとバレーボールの共通点は「ボールへの反応の速さが重要」なことです。テニスという個人競技とバレーボールという集団競技を通して、個人と集団、両方の楽しさを味わわせながら基礎技能を高めるという狙いがあったのです。

 その子は、「運動神経の良さ」という「素質」と、「負けず嫌い」という「気質」を親から引き継いでおり、どちらのスポーツもすぐに学年でトップレベルの技能を身につけました。

 ここで重要なのが、上達を急がず基礎技能の習得に専念することです。普通、学年トップになったらさらなるレベルアップを狙いがちです。しかし、親はレベルの高いチームに移籍させたり、年齢が上の選手と競い合わせたりせず、今いるチームでコツコツと基礎練習を重ねさせたのです。

 その子は小学校の高学年まで2つのスポーツを両立していましたが、中学からは本人の希望で「ガチ競争」であるテニスに重点を置きました。この段階で初めて、親はより高いレベルのテニストーナメントに出場させ、実戦で通用する技術や戦術の習得へと指導方針を切り替えたのです。

 その子は中学1年生の時には「14歳以下の州代表チームメンバー」に選ばれ全米大会で活躍。高校1年生の時にはダブルス選手として州の高校チャンピオンになりました。翌年からはシングルスに転向して「3年連続州の高校チャンピオン」になり、見事、希望する大学にスポーツ奨学金を得て入学しました。

「2000時間」は基礎を徹底すること

 父親に話を聞いたところ「男の子の場合、心身+技能発達のピークを高校時代に定め、そこから逆算して、どんな練習メニューや競争環境を与えるべきなのかを考えることが大切」と、(こっそり)教えてもらえました。

 子どもの心身が発達途上の時期に、才能があるからと高い競争環境に飛び込ませたり、特定の身体部分を酷使させると、体やメンタル面の発達が追いつかず、怪我をしたり、燃え尽き症候群に陥る危険性があるのです。

 体が大きく強くなり、子どもが自分の意欲で習い事に取り組めるようになるまでは、基礎技能の習得に徹するのです。

 私の経験からいえば、スポーツ、音楽、語学などの技能習得は「2000時間」を目安にすると頭一つ突き抜けることができます(詳細は『【鉄則】習い事伸ばしのゴールデンタイムは「12歳まで」な理由〈教育専門家が解説〉』を参照)。この2000時間は、将来子どもが飛躍するために欠かせない準備期間なのです。

「わが子にピッタリの習い事を詳しく知りたい!」という方のために、著書『「強み」を生み出す育て方』ではオリジナル診断を掲載しています。気質×才能の25タイプ別診断で「わが子にピッタリの習い事」をセルフ判定できます。

子育て成功のカギは「強み育て」にある

【実例】習い事で子どもの「燃え尽き症候群」を防ぐシンプルで強力な方法「強み」を生み出す育て方』 (船津徹・ダイヤモンド社)定価:1980円(税込)

 子どもが社会の変化に翻弄されずに、自分らしく幸せに生きていくには、失敗や挫折に負けない「たくましさ」を確立しなければなりません。一生ものの武器になるたくましさですが、どのように育てれば良いのでしょうか?

 たくましさが育つ要因は、家柄、血筋、遺伝ではありません。もちろん親の学歴や職業も無関係です。「子どもの潜在的な強みを引き出すこと」でたくましさは育つと断言できます。

 つまり、子育てで最優先すべきは「強み育て」なのです。強みは、音楽でもスポーツでも勉強でも、なんでもいいのですが、習い事は強みを育てる最高のチャンスになります!だから習い事選びは「子育て成功」に直結するのです。