「違法e-bikeが歩道を走る」無法地帯と化した道路の“危険すぎる現状”野放しにされる「違法e-bike」......信頼のおける量販店で購入できるものは合法だ(写真は合法車両です) Photo by Kazuyuki Yamaguchi

日本生まれの電動アシスト自転車は、海外でe-bike(イーバイク)と呼ばれて進化し、世界的に普及した。日本では道路交通法によって出力制御がかかるが、それを逸脱するハイパワーモデルも町中で散見する。さらにペダルを漕がなくても進むタイプが自治体公認のシェアサイクルとして出現。大きな社会問題になる前に、このカオス的状況を交通整理しておきたい。(スポーツジャーナリスト 山口和幸)

違法e-bikeを
買いに来る人たち

「エレクトリック」の頭文字である「e」を冠したe-bikeは、2010年頃からまず欧米で登場した。電動アシスト自転車の可能性に気づいた欧米自転車メーカーが、もっとアクティブに走れるスポーツアイテムとして進化させたのだ。クロスバイクやMTBに電動アシストユニットを搭載し、スタイリッシュに仕立てた。余暇のサイクリングだけでなく、クルマに代わる移動手段としても利用され、e-bikeは急速にシェアを伸ばしていく。

 自転車を降りて押したくなるような峠道の難所でも、アシストパワーでグイグイと上れる。熟年層の体力低下もカバーするし、e-bikeに乗れば、体力差がある人と一緒に走れて同じ景色を楽しむことができる。それが魅力の一つ。健康志向や高齢化のみならず、気候変動などの環境問題も後押しした。

 ワイズロード新橋店の田渕喬介店長によると、店舗でe-bikeを購入するのは30代から60代の男性が多く、平均すると片道10kmの通勤などに利用しているという。バッテリーの1充電で航続距離が80km程度だとすると、1週間程度は乗り続けられる。

 購入目的の第一は楽に走れるから。一般的なママチャリと一線を画す部分は、スポーツバイクのように効率的に体を動かせる前傾姿勢が取れることだ。漕ぎ出しや上りなどツラいところでアシストを使うだけでも頼もしい。スポーツバイクのカテゴリーの中の電動アシスト自転車だと言い換えてもいい。見た目のファッショナブルさに魅力を感じてカジュアルモデルを選ぶ人も多い。この数年間、毎年5%程度のペースで売上が伸びている。

「違法e-bikeが歩道を走る」無法地帯と化した道路の“危険すぎる現状”e-bike の豊富なラインナップをそろえるワイズロード新橋店の田渕喬介店長 Photo by Kazuyuki Yamaguchi

 しかし、問題点も浮上している。モーターによるアシストの強さは各国の法律で決められている。海外ではもともとレジャー向けの開発だったため、パワーは強力だ。一方、日本では時速10kmまでは人間がペダルを踏み込むパワーに対して最大2倍までのモーター出力に頼れる。時速が高まるにつれてアシスト力が弱くなるように制御され、時速24kmでモーター出力は0になる。

 日本の道路交通法では、そのための性能制御を実装しないとオートバイのカテゴリーになり、原付き運転免許取得やヘルメット着用、ナンバープレート装着、歩道への乗り入れ禁止などのさまざまな制限が生じる。だから、まともな海外e-bikeブランドならモーターの仕様や電子制御部分は必ず日本向けに調整して出荷している。

「電動アシスト自転車が法律に準拠していることを証明する型式認定という制度がある。公益財団法人日本交通管理技術協会ホームページに認可を受けたモデルの一覧が掲載されているので自分でも調べられるし、お店に聞いてもらえればいい。ワイズロードで取り扱っているe-bikeは、原則すべて型式認定の認可モデルで合法な製品です」(田渕店長)

 ところが現在、街なかでオーバースペックのe-bikeが走行しているシーンを毎日のように見かける。利用する本人が違法であることを知っているかは定かではないが、これは明らかな道路交通法違反だ。

 国民生活センターが「道路交通法の基準に適合しない電動アシスト自転車に注意」として2023年10月25日に公表した調査によると、違法が疑われる10銘柄中9銘柄でアシスト比率が道路交通法の定める上限値を超え、日本での基準に適合していなかった。うち6銘柄はその上限値を大きく超え、人の力をほとんど要さずにかなりの速度まで加速した。5銘柄にはスロットル(手元のアクセル)のような装置が付いていて、そのうちの2銘柄は操作すると急加速したという。

 ワイズロード新橋店でも「こがないで進むやつはないの?」と訪れる人もいる。「それは違法だから扱っていないんですよ」と返す。