ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
利益や売上げばかり考える人は、なぜ失敗してしまうのか――目的工学[入門編]
【第1回】 2013年3月28日
著者・コラム紹介バックナンバー
紺野登 [多摩大学大学院教授、KIRO(知識イノベーション研究所)代表],目的工学研究所 [Purpose Engineering Laboratory]

「ビジネスの目的とは何か」が問われている。
ドラッカーが、そしてハーバードのあの人も?
――本文から(その1)

1
nextpage

「手段の時代」から「目的の時代」へ――手段にとらわれすぎると、本質を見失う。リーマン・ショックの経験を経て、世界じゅうの先覚者たちが、目的の重要性を唱え始めた。まず「利益」ではなく、「よい目的」を考えるビジネスを実践するために、私たちにできることは何か。

はじまった目的工学の取り組みをさまざまな形で紹介していく。まずは『利益や売上げばかり考える人は、なぜ失敗してしまうのかーードラッカー、松下幸之助、稲盛和夫からサンデル、ユヌスまでが説く成功法則』の第1章「利益や売上げは『ビジネスの目的』ではありません」を、順次公開する。

ハーバードの経営学者が、
「利潤の最大化」を否定した?

 2011年のことです。世界経済フォーラムは毎年、国際的に著名な政治家や経営者、学者が一堂に会する年次総会を、スイスの保養地ダボスで開いています(これが「ダボス会議」と呼ばれるゆえんです)。

 この年の1月28日、本会場のダボス・コングレス・センターでは、「企業の未来」というテーマのパネル・ディスカッションが開催されました。

 そのオープニングを飾ったのは、2ヵ月前に7年間の自宅軟禁から解放されたアウンサンスーチーさんによる、ビルマ ― 現在の軍事政権が1989年に「ミャンマー」に国名を変更しましたが、彼女をはじめ一部の人々は、これを認めていません ― の現状と支援を訴えるビデオ・メッセージでした。

 これを受けて、ネスレやペプシコといった日本でもおなじみの会社のCEOたちが、企業とコミュニティの関係、ビジネスのあるべき姿、企業の新しい役割について意見交換をしました。そこには、唯一の学者として、ハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・ポーター氏の姿もありました。

 ポーターと言えば、毀誉褒貶(きよほうへん)があるとはいえ、発行から30余年が経った現在でもビジネス・リーダー必読といわれる『競争の戦略』を著した経営戦略の研究家であり、世界的なマネジメント・グールーの一人として知られています。

 このパネル・ディスカッションで、彼はこのような主張を繰り広げました。
「企業はこれまで、利益や株価といった経済的な価値ばかり追求してきた。しかし、これは短期的で、了見の狭い考え方である。これからは、経済的価値と社会的価値を両立させる必要がある」

 これは、ポーターの経歴を知る人やその著作を読んできた人たちにすれば、ちょっとした驚きだったのではないでしょうか。「あのポーターが、こんな殊勝なことを言うようになったのか ― 」。

 何しろ、みずからも述べているように、伝統的な経済学の教育を受け、それゆえ「企業の目的(パーパス)は利潤の最大化である」という、ダボス会議で主張したこととは正反対の前提の下に、自身の理論を展開してきたのですから。

1
nextpage
スペシャル・インフォメーションPR
ダイヤモンド・オンライン 関連記事
いまの科学で「絶対にいい!」と断言できる 最高の子育てベスト55

いまの科学で「絶対にいい!」と断言できる 最高の子育てベスト55

トレーシー・カチロー 著/鹿田 昌美 訳

定価(税込):本体1,600円+税   発行年月:2016年11月

<内容紹介>
子どもの豊かな心を育て、頭と体を伸ばしていくために親が知っておきたいことについて、最新の科学研究をもとに「最も信頼」できて「最も実行しやすい」アドバイスだけを厳選して詰め込んだ貴重な本。子にかけるべき言葉、睡眠、トイレトレーニング、遊び、しつけまで、これ一冊さえ持っていれば大丈夫という決定版の1冊!

本を購入する
ダイヤモンド社の電子書籍
(POSデータ調べ、11/20~11/26)


注目のトピックスPR


紺野登 [多摩大学大学院教授、KIRO(知識イノベーション研究所)代表]

多摩大学大学院教授、ならびにKIRO(知識イノベーション研究所)代表。京都工芸繊維大学新世代オフィス研究センター(NEO)特任教授、東京大学i.schoolエグゼクティブ・フェロー。その他大手設計事務所のアドバイザーなどをつとめる。早稲田大学理工学部建築学科卒業。博士(経営情報学)。
組織や社会の知識生態学(ナレッジエコロジー)をテーマに、リーダーシップ教育、組織変革、研究所などのワークプレイス・デザイン、都市開発プロジェクトなどの実務にかかわる。
著書に『ビジネスのためのデザイン思考』(東洋経済新報社)、『知識デザイン企業』(日本経済新聞出版社)など、また野中郁次郎氏(一橋大学名誉教授)との共著に『知力経営』(日本経済新聞社、フィナンシャルタイムズ+ブーズアレンハミルトン グローバルビジネスブック、ベストビジネスブック大賞)、『知識創造の方法論』『知識創造経営のプリンシプル』(東洋経済新報社)、『知識経営のすすめ』(ちくま新書)、『美徳の経営』(NTT出版)がある。

目的工学研究所 [Purpose Engineering Laboratory]

経営やビジネスにおける「目的」の再発見、「目的に基づく経営」(management on purpose)、「目的(群)の経営」(management of purposes)について、オープンに考えるバーチャルな非営利研究機関。
Facebookページ:https://www.facebook.com/PurposeEngineering


利益や売上げばかり考える人は、なぜ失敗してしまうのか――目的工学[入門編]

「手段の時代」から「目的の時代」へ――手段にとらわれすぎると、本質を見失う。リーマン・ショックの経験を経て、世界じゅうの先覚者たちが、目的の重要性を唱え始めた。まず「利益」ではなく、「よい目的」を考えるビジネスを実践するために、私たちにできることは何か。はじまった目的工学の取り組みをさまざまな形で紹介していく。

「利益や売上げばかり考える人は、なぜ失敗してしまうのか――目的工学[入門編]」

⇒バックナンバー一覧