フェイスブックのCOO(最高執行責任者)、シェリル・サンドバーグが“Lean In”という書籍を3月11日に出版しました(日本語版は今夏に発行される予定)。
サンドバーグと言えば、当連載の第1回で「なぜ女性はすべてを手に入れられないのか」という議論を紹介しています。プリンストン大学の教授で、ヒラリー・クリントン元米国務長官の下で国務省政策企画本部長を務めたアン・マリー・スローターが、米アトランティック誌に“Why Women Still Can’t Have It All”という記事を寄稿したのに対して、真っ向から異議を唱えたのが、フェイスブックのシェリル・サンドバーグでした。彼女は、女性はもっと積極的に自己主張し、家事をシェアできるライフパートナーを見つけ、昇進や成功を目指し、キャリアをあきらめてはいけないと言います。
今回の書籍はその視点を深く掘り下げた内容のものです。サンドバーグはハーバード大学を首席で卒業し、ラリー・サマーズ米財務長官の補佐役を務め、その後グーグルで6年半働き、フェイスブックにリクルートされました。能力と地位を手に入れ、報酬は20億円とも言われます。2人の子供がいて、子育てを積極的にサポートしてくれる理解のあるご主人もいる中で、女性がもっと積極的になるべきだと主張する同書に対して、賛否両論含めて、多くの議論が起きています。
たしかに彼女には恵まれた面がありますが、一方で、その恵まれた環境にたどりつくまでにさまざまな苦労があり、葛藤があった様子も同書では描かれています。試行錯誤でキャリアを積んできた今だからこそ、女性がもっと積極的に関わり、前に進むべき必要性を痛感し、自分が声を上げるべきだと考えてこの書籍を記したと言います。
今回は、この書籍の中で、彼女が示し、私なりに読み取った5つのマインドチェンジについてご紹介します。
その1 キャリアははしごではなくジャングルジム
キャリアはよく「はしご」にたとえられますが、上に行くにはいくつもの方法がある「ジャングルジム」だと彼女は言います。彼女がこのことに気付いたのは、eBayのマーケティング・ディレクターだったロリ・ゴラーを採用したことによってです。サンドバーグがフェイスブックに入社して1ヵ月くらいたったときに、ゴラーはフェイスブックで働きたいと連絡をしてきて言いました。「あなたの問題は何ですか?私はそれをどう解決できますか?」
サンドバーグはそれまでに数千人を採用した経験がありましたが、彼女にそんなことを言った人は一人もいません。サンドバーグはゴラーに、採用が一番の問題だと伝え、その担当をするようにオファーしました。ゴラーは採用部門で働いたことはなく、提示した職位もそれまでよりも低いものでしたが、このチャンスをつかみました。そして新しいスキルを手に入れるために、低い職位をいとわず、実際にとてもよい仕事ぶりで、数ヵ月ですぐに昇進したそうです。