笑顔のビジネスパーソン写真はイメージです Photo:PIXTA

今回は、気くばりをするうえでの前段階――つまり、気くばりをするうえで土台となるポータブルスキルと心のもちようについて解説します。ポータブルスキルとは「聞く」「表情」「整える」、何の仕事をするうえでも必要なことです。心のもちようとしては「自分軸」「感謝」を指します。この5つのスキルを身につけることで、気くばり力も格段に上がります。
※本稿は、柴田励司『リーダーの気くばり』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を抜粋・編集したものです。

人の話を「聞く」ということ

 まず、聞くということについて。聞くとは相手の意図することを理解するという意味です。相手の言葉を鵜呑みにするのではなく、質問によって、相手の意図することを探り当てます。

 どううまく質問していくか。効果的な質問の仕方のひとつをご紹介しましょう。これはコンサルタントのノウハウで、asking effective questionsと言われる方法です。相手の発する言葉を質問をしながら定義していきます。

 相手との会話の中で「残業」という言葉が出てきたとき、「残業が多くてすごく大変ですよね」と言われた場合に「そうですね」と言ってすぐに反応するのではなく、相手が「残業が多くて大変だ」と言っているその言葉の背景に、時間外手当が増えてしまうことを心配しているのか、働き過ぎで倒れてしまうことを心配しているのか、労基署の調査が入ってブラック企業とされてしまうことを心配しているのか、それらの意図を明らかにします。

「そうですよね。この状態が1~2カ月続いたらどうなりますかね」とリアクションします。これに続いて相手から「倒れるやつが続出するだろう」という言葉が出たら、相手はそれを心配して残業のことを言っているんだな、とわかります。

 これは「What happen?」です。「これ(残業)を放置していると、どんなことが起きるのか?」という視点から質問をしていきます。

 この流れから残業を改善したらどんないいことが起こるのか、放置したらどんな悪い結末になるのか、などを質問していきます。前者が「Peeling for gain」、後者が「Peeling for pain」という手法です。これにより、対処すべき最終課題を明らかにするのです。最終課題が明らかになれば、その解決のために投入すべきリソース(人員やお金)も明らかになります。100万円かけて直さないといけないと思っていた問題を、いろいろ質問して聞き出すことによって、実は5万円程度の支出で済むと気がつくのです。

 こうして質問を投げかけていくことで、自分はもちろん相手の頭の中も整理されていきます。「聞くテクニック」として、気くばりを実践するために必要なスキルといえます。

 そのほか、相手の過去のエピソードや経験を聞き出すことで、相手の人となりを知ることができます。相手の出身地を聞き出して、それにまつわる話や、趣味の話、好きな食べ物など、話を広げていく。こうした雑談から気くばりにつなげることも可能になります。これらすべてが聞く力、聞くスキルということになります。

 また、相手が言っていることを、自分の理解のために「こういうことですか?」とその意味することをまとめて返すパラフレーズも使ってみるといいでしょう。