山口揚平さんと大石彩佳さんの対談の前編では、お金の話から大石さんの夢を実現するためのアドバイスが、山口さんから贈られました。後編では、まさに就職活動真っ最中の大石さんの進路の話を皮切りに、お金と愛と信用にまつわる価値観を語り合います。

東大法学部では法曹・官庁より民間への就職が人気

山口揚平(以下、山口) 大石さんは、就職先としてどのような業種を志望されているのですか。

大石彩佳(以下、大石) 最初は、外資系の投資銀行を受けていました。面接はどんどん進んでいったのですが、途中で少し違和感があって志望先を変えました。自分の人格形成に大きく影響するファーストキャリアとして、お金と権力が中心になってしまう世界で生きることに躊躇してしまったのです。

山口 ファーストキャリアは人格形成のすべてだと思うので、そう感じたなら、選択は正しかったと思いますよ。

大石 自分がその世界に進んだとしても、「なりたい自分」になれそうもないと思ったんですね。前編でもお話ししましたが、私は精神的な豊かさや愛を重視する世界で生きていきたいタイプだと思います。

山口 そもそも、投資銀行を志望したのはなぜですか。

大石 UT-Aidの活動を通じてファンドのお仕事をされている方々のお話を聞く機会が多く、お金を扱う業界にあこがれを抱いたのがきっかけです。

山口 仲良くなった人たちと、面接で会った人は違う印象だったのですか。

大石 そういうわけではありませんが、数字を目標とする業務そのものに興味が持てなかったんですね。つまり、仕事を続けるモチベーションがお金しかないと感じたのです。自分はお金というモチベーションだけで仕事ができるだろうか。そう考えると、いや、違うという結論に達しました。30歳、40歳になったときに役立つキャリアになるだろうか。そう考えてもやはり、違うと思ってしまったのです。

 東大にいると、外資系投資銀行や外資系コンサルティングファーム、ファンド=優秀という雰囲気があります。法学部は伝統的に、法曹、官庁への人材を養成する学部でしたが、最近は民間就職を目指す人が多いです。能力主義が盛んに唱えられている時代に、国家公務員は労働と報酬のアンバランスさから不人気になっているんだと思います。前編に出てきたお金と愛のチャートでいえば、お金の座標が低く愛の座標が高い右下部分というところでしょうか。