日本人の旺盛な好奇心

そこから時代が下って、江戸時代に来日した外国人が日本人の印象を書き残しています。そこで多く指摘されているのは、日本人の好奇心の強さです。

外国人を見かけると人がわらわらと寄ってきて持ち物や洋服、目の色についてまで根掘り葉掘り質問をしてくるので疲れるというのです。

小説にも、日本人の好奇心やイノベーティブな側面はとり上げられています。

昔の日本人のフロンティア精神

たとえば、『天地明察』(冲方丁 著)を読むと、日本の江戸期の天文学が海外と比較して決して遅れをとっていなかったことがわかります。

この作品は第7回本屋大賞の受賞作品であり、俳優の岡田准一さん主演で映画化もされています。

また、『王国への道―山田長政』(遠藤周作 著)は、タイのシャムという古都で活躍した人物である山田長政を描いています。

これを読むと、昔の日本人はフロンティア精神を持っていたのだということが強く伝わってきます。

イノベーションの源泉とは?

私は、日本人にこの好奇心のDNAがあったからこそ、戦後の科学技術立国が実現できたと考えています。イノベーションの元は好奇心にあったということです。

「数学を学んでも社会で役に立たない」「歴史的な事件を知っても給料が上がるわけじゃない

それも一理ありますが、一見無駄に見える知識の集積こそが、いざというときに自分の身を助けてくれます。知ってすぐ役立つかどうかではなく、知ることそのものに意味があるのです。

私たちには好奇心の素養があるのですから、知りたいという気持ちに蓋をせずに、学ぶ喜びを知ってほしいと思います。

※本稿は、『教養としての歴史小説』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。