安倍マジック!?
賃上げラッシュの真相

 トヨタ自動車、一時金約205万円の満額回答。日産自動車、同5.5ヵ月の満額回答。ホンダ、同5.9ヵ月の満額回答──。

 春闘の大手企業集中回答日となった3月13日、自動車メーカーなどを中心に一時金の満額回答や昨年実績を上回る回答が相次ぎ、“賃上げラッシュ”への期待が高まっている。

 集中回答日の約1ヵ月前の2月12日、首相官邸。安倍晋三首相はデフレ脱却に向けた経済界との意見交換会で、経団連の米倉弘昌会長ら経済3団体のトップにこう語った。

「安倍政権の目標は、頑張った人が報われる社会。業績が改善している企業においては、報酬の引き上げを行うなどの取り組みをご検討いただきたい」

 米国やユーロ圏と比較すると、日本だけ賃金下落が続いている。こうした状況を踏まえての発言だった。

 異例の賃上げ要請に最初に応えたのは流通業界だった。ローソンを口火に、セブン&アイ・ホールディングス、ファミリーマート、ニトリホールディングスなどが次々と賃上げを表明した。

 こうした流れだけを見れば、安倍首相の発言がマジックのように浸透し、一連の賃上げを引き起こしたように思える。しかしタネを明かせば、そこには2つの誤解がある。