孫正義Photo:NurPhoto via AFP

感情的になっている人や、意地悪な質問をしてくる人に対して、対立せずに上手に付き合う方法はないものか。言語化コンサルタントで『すごい言語化 「伝わる言葉」が一瞬でみつかる方法』の著者・木暮太一氏に、感情的な相手を一瞬で黙らせるテクニックと「キラーフレーズ」を伝授してもらった。(作家・出版社経営者・言語化コンサルタント 木暮太一、構成/伊藤博之)

感情的な相手には
「論点をずらす」

「どうしてこんなことを言ってくるのだろう」と思う瞬間がたまにあります。

 研修に招かれて、「言語化」の重要性や、どうしたら自分の思いを相手に伝えられるのか、数時間かけて一生懸命にお話ししました。すると、先方の研修担当者が、「今回の研修でお聞きしたお話の内容は当たり前のことばかりで、誰でも知っていることですよね」といったようなことを言ってきました。内容については事前に打ち合わせをしているわけで、セミナーが終わった段階で、そのような意見を唐突にぶつけられ、とても心外に思いました。

 相手のほうに悪意があったかどうかは分かりません。しかし、こうしたときに最も大切なのは、こちらが感情的な対応をしてはいけない。では、どうしたらいいのでしょう。

「論点をずらす」ことを、私はお勧めします。その場で議論しても意味がありません。結局は感情のぶつけ合いになり、どこまで行っても、お互いに納得することがないからです。それであるのなら、意図的に論点をずらして、話を別の方向に導いていくほうがいい。

ネットで話題になった
自殺防止の標語が秀逸

 少し前にネット上で話題になった自殺防止の標語があります。自殺の名所とされる海岸に、川柳調の「五・七・五」の標語を掲げた立て看板をしたところ、自殺者数が半減したという触れ込みのものでした。

 ネットに出回った立て看板の画像は、実際には存在しないコラージュ画像だと言われているのですが、標語そのものの出来は秀逸で、私は「お見事」と心の中で叫び、思わず膝をたたきたくなりました。感情的になっている相手に対して感情的な対応をせず、自殺という論点をずらす、素晴らしい標語だったからです。