麺文化の元祖・中国で「日本のラーメン」が浸透 

 アジアでの日本のラーメンはどんな局面にあるのだろうか。マレーシアで飲食店を経営する坂下浩盛さんは、次のように話している。

「2019年まで首都・クアラルンプールは日本のラーメンブームに沸いていました。新型コロナウイルスの拡大で一時的に止まりましたが、ここに来て再び新規出店が始まっています。今までノン・ハラルのラーメン店が多かったんですが、ハラルラーメン店の出店が増えそうです。これが当たれば市場は大きいと思います」
(※ハラル=イスラム教において「合法」とされること。イスラム教では、豚肉や酒などの飲食は許されていない)

 ちなみに、前述の桜井食品は2018年に「ベジタリアンのとんこつ風らーめん」を開発したが、「東南アジアには『宗教上の理由で豚は食べられないが、豚骨ラーメンは食べてみたい』という潜在需要があります」(桜井さん)とコメントしている。

 中国のラーメン事情はどうか。中国では、世界のグルメの参入に寛容な上海を中心に、2000年代初頭から豚骨ラーメンで知られる「味千ラーメン」や「一風堂」などの“日式ラーメン(日本のラーメン)”の店舗が見られるようになった。
 
 当時は現地在住の日本人駐在員が好んで食べたが、2010年代に入ると、訪日旅行帰りの中国人を中心に広がった新市場で、“日式ラーメン”の進出がさらに際立つ存在となった。食に保守的だといわれる北京でも、需要を伸ばしていった。

 その一方で、前出の鈴木さんは、近年の中国での変化をこう指摘している。

「日本から進出してきた豚骨ラーメンは、当時珍しがられましたが、今では中国の飲食業が豚骨ラーメンを普通に出しています。当初は中国式か日本式かの区別があった中国のラーメン市場も、その境界が曖昧になり、“日式ラーメン”は今や中国のラーメンの一部になっています」

 インターネット上でも「ラーメンは日本食か?」という議論が散見されるが、中国はもともと麺を食文化に持つ国だ。「チキンラーメン」や「カップヌードル」の開発者で日清食品の創業者・安藤百福氏(1910~2007年)は、「拉麺は日本に伝わってラーメンとなる」(『麺ロードを行く』講談社、1988年)と述べている。

 原型は中国だが、独自に発展した日本のラーメン。そのラーメンは世界の市場が求める「ヘルシー化」の期待も負う。顧客のニーズに合わせてカスタマイズしやすいラーメンの、可能性は無限に広がっている。