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経済分析の哲人が斬る!市場トピックの深層
【第93回】 2013年4月3日
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熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト],森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト],高田 創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]

2%のインフレは、3%の消費税増税とどう違うのか
――熊野英生・第一生命経済研究所
経済調査部 首席エコノミスト

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 デフレ脱却を急ぐために、日銀は2年以内に2%の消費者物価上昇を目指すという。2%の消費者物価上昇率を達成すれば、デフレを脱却できるのだろうか。

 注意したいのは、多くの人が景気を良くして物価の下落を止めるということを指して、「デフレ脱却」と言っていることだ。単に経済指標としての消費者物価を上げることを望んでいるのではない。

 単に消費者物価を上げるのならば、消費税率を引き上げればよい。消費税は、事業者が販売価格に税率をかけた金額から、仕入代金に消費税をかけた金額を控除して納税する。3%分は事業者のものにならない。

 付加価値の中から抜き取られた税額の部分は、事業者から政府へと所得移転されるだけだ。最終的に税金を負担するのは消費者だ。だから、消費税増税は、消費者物価を上げることになっても歓迎されない。

 一方、金融緩和を通じたデフレ脱却は、マネーを増やすことによって起きるという説明になっている。純粋な貨幣数量説に基づくと、貨幣流通量を増やせば、物価の水準自体が書き換えられて、デフレが解消されることになっている。

 貨幣流通量が10%増えれば、物価も10%上昇するという論法だ。ということは、尺度としての貨幣が増加した結果、物価が上がっても、正味の生産性は変化しないということになる。つまり、実質成長率は不変(中立的)という意味である。

 3%の消費税率の引き上げでも、2%の消費者物価上昇でも、実体経済を良くする効果がないのに、なぜ大胆な金融緩和が推進されようとしているのだろうか。筆者は、インフレに隠れた思惑があると見る。

 実際は、貨幣数量説の説明とは異なって、マネーを増やすと経済成長率には中立的ではない刺激効果が表れるから、実体経済に与える影響に期待する人が増えるのだと考える。

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熊野英生 [第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト]

くまの・ひでお/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト。 山口県出身。1990年横浜国立大学経済学部卒。90年日本銀行入行。2000年より第一生命経済研究所に勤務。主な著書に『バブルは別の顔をしてやってくる』(日本経済新聞出版社)など。

森田京平 [バークレイズ証券 チーフエコノミスト]

もりた・きょうへい/1994年九州大学卒業、野村総研入社。98年~2000年米ブラウン大学大学院に留学し、経済学修士号を取得。その後、英国野村総研ヨーロッパ、野村證券金融経済研究所経済調査部を経て、08年バークレイズ・キャピタル証券入社。日本経済および金融・財政政策の分析・予測を担当。共著に『人口減少時代の資産形成』(東洋経済新報社)など。2010年7月より、参議院予算委員会内に設置された「財政再建に向けた中長期展望に関する研究会」の委員を務めている。

 

高田創 [みずほ総合研究所 常務執行役員調査本部長/チーフエコノミスト]

たかた はじめ/1958年生まれ。82年3月東京大学経済学部卒業、同年4月日本興業銀行入行、86年オックスフォード大学修士課程修了(開発経済学)、93年審査部、97年興銀証券投資戦略部、2000年みずほ証券市場営業グループ投資戦略部長、06年市場調査本部統括部長、チーフストラテジスト、08年グローバル・リサーチ本部金融市場調査部長、チーフストラテジスト、11年より現職。『銀行の戦略転換』『国債暴落』『金融市場の勝者』『金融社会主義』など著書も多い。


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