3月に日銀よる利上げが17年ぶりに行われ、マイナス金利が解除されると、テレビや新聞では住宅ローンへの影響を心配する人たちの声が多く紹介されるようになりました。将来のさらなる金利上昇への不安から、「固定金利」への借り換えを行う人も少なからずいるようです。
「変動金利」はこれから本当に不利になっていくのでしょうか? これから住宅ローンを借りる人、いま返済中の人はどのような選択をすればよいのでしょうか?
こうした声を受けて、日本最大級の住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」を運営する株式会社MFSの塩澤崇氏が、新時代に対応した住宅ローン本『金利が上がっても、 住宅ローンは「変動」で借りなさい』を上梓することになりました。ここでは、5月8日に発売される同書の「はじめに」を先行して公開します。

住宅ローンへの不安

マイナス金利が解除されても、住宅ローンは「宝の山」

 はじめまして、住宅ローンアナリストの塩澤崇です。

 家を買うとき、住宅ローンは欠かせないものですが、ほぼ100%の人が「お金を借りる」ということにネガティブな印象を持ちます。

「数千万円(数億円?)もの重圧がのしかかる……」
「金利が上昇したら35年後まで返済できるか心配」
「できれば借金なんてしたくない」

 あなたもこういった感覚を心のどこかに抱いているのではないでしょうか?

 住宅ローンを借りると、借りた元本を返すだけでなく、「金利」という馴染みのないものが上乗せされ、しかも変動金利であればその金利が上下するわけですから、不安を感じるのは仕方がないことです。

 でも実は、きちんと理屈を立てて考えると、「住宅ローンは宝の山」ということがわかってきます。

「長期返済で高額の借金なのにお宝のワケないじゃん!」とツッコミを入れたくなるでしょうが、逆です。「長期返済で高額の借金」だからこそ、メリットがたくさんあるのです。意外ですよね?

 自己紹介が遅れましたが、私は現在、AIを活用した住宅ローン比較診断サービス「モゲチェック」を運営する株式会社MFSで取締役COOを務めています。モゲチェックは一人ひとりにとって最適な住宅ローン選びに役立つ情報を提供し、ローンに申し込めるサービスで、これまでに累計20万名以上の方にご利用いただきました。

 また、私は住宅ローンアナリストとしてYouTube「住宅ローンアナリスト塩澤」やX(旧Twitter、アカウント名「モゲチェック塩澤」)で住宅ローン情報を発信しており、「モゲ澤」と呼ばれることも多いです。

 今の仕事をする前は、モルガン・スタンレー証券(現 モルガン・スタンレーMUFG証券)で住宅ローン証券化のキャリアを積み、地方銀行と提携して住宅ローンの新商品開発を行っていました。また、ボストン・コンサルティング・グループでは金融機関を中心に戦略コンサルティングを行い、リテール事業戦略や海外進出などのアドバイスを手がけてきました。

 このように、長らく住宅ローン市場および戦略立案の世界に関わってきた私は、住宅ローンをこれから借りようとする方や、借り換えを検討している方など、多くの方からご質問やご相談をいただきます。やはり「家は人生に一度の買い物」といわれるだけあり、住宅ローンの借入れ方や今後の金利見通しなど、「そもそも、住宅ローンとどのように向き合うのがいいのか?」ということに悩んでいる人はかなり多いです。

 にもかかわらず、そうした悩みに対して結論をロジカルに示してくれる有識者はほとんどいません。

 本についても同様で、住宅ローンの全体像を踏まえて解説する戦略本はなく、「住宅ローンといえばこの本!」という決定版は私の知る限り見当たりません。どちらかというと、住宅ローンの細かい商品内容や申し込み方などを解説した実務本が多い状況です。

 また、ウェブメディアなどでは「固定金利と変動金利のどっちがいい?」といったテーマが取り上げられることがありますが、最後まで読んでも「で、結局どっちなの!?」と思うことがほとんどです。たまに結論を出してくれている記事もありますが、根拠が曖昧で腹落ちしません。

変動金利か固定金利か

 そんな状況にフラストレーションが溜まっていたことが、私がYouTubeなどで情報発信しようと思ったきっかけになりました。

 私が情報発信をするときに心がけているのは、「定量的な理由をきちんと添えて、ロジカルに結論を示す」ということ。なぜなら、そうしなければ本当の意味で読者に納得感を得てもらえないと考えているからです。

 そこでこの本でも、あくまでもロジカルに徹し、まるごと一冊を使って住宅ローンについて解説し、ほとんどの人が知らない住宅ローンの本質をお伝えしたいと思います。いわば、個人が賢く住宅ローンを活用するための住宅ローン戦略本です。

 そして、日本の多くの方が抱いている住宅ローンのネガティブな印象を、「借りているって実はすごいことじゃん!」とポジティブに変えることが最終的な目標です。

「持ち家と賃貸はどっちがお得?」といった昔から議論されるテーマや、最近とくに話題の「変動金利と固定金利、どちらがいいの?」「変動金利でちゃんと完済できるかな?」「固定金利に借り換えたほうがいいの?」にもばっちり回答していますから、気になるところから読んでいただいてもかまいません。

 また、インフレ時代の家計戦略や住宅ローンと絡めた資産形成、および住宅ローンの大きなメリットである団体信用生命保険などに一通り触れていきますので、効率的に金融リテラシーを高めることができます。

 モヤモヤしている頭の中が、この本を読み進めていくと徐々にクリアになり、世界の見え方が変わるような発見がたくさんある、そんなワクワクする内容にしていますので、ぜひ気軽に読み進めてください。

 最後に、お断りをしておきます。

 私はこの本の中で、単に情報を整理するだけでなく、「私ならこうする」というスタンスをはっきり示しています

 そのため、私に同意される方もいれば、そうではない方もいらっしゃるでしょう。私はそれでいいと思っています。

 本書の内容に同意できるのであれば、「私の考え=あなたの考え」。同意できないと思われるのであれば、私とは逆の意見(もしくは第3のアイディア)があなたの考えです。

 私は「住宅ローンを借りるなら変動金利」と考えており、その根拠を本の中で書いていますが、「モゲ澤の意見に納得できないから、固定金利を選ぶ」と考える人がいてもいいと思っています。最後はその人の判断ですから。

 いずれにしても、この本はご自身の考えを整理し、形作るのにきっと役立つはずです。そして、この本をいわば“踏み絵”として使っていただきたいと思っています。

 自分の中にロジックをもつ人は強いです。今、住宅ローン金利をめぐる状況はめまぐるしく変化しようとしています。日本銀行の総裁が黒田東彦氏から植田和男氏に代わり、以前のような金利見通しの立ちやすいイージーゲームの時代は終わろうとしています。日本経済全体の先行きも、明るさがある中で不透明感が漂っている状況です。ニュースで「マイナス金利解除」といった言葉が出るたびに不安を感じ、少し前とは何かが変わりつつあると肌で感じている方もいらっしゃるでしょう。

 そんな時代の変わり目だからこそ、自分の頭で「最適な方法はなにか」を考えることが非常に大切です。そして、この本を読んで、「私は変動がいいと思う。理由は○○」「××だから、固定を選ぶ」とご自身の意見が明確になる人が一人でも増えることを願っています。

【訂正】記事初出時より以下のように修正しました。1ページ目の見出し【マイナス金利解除が解除されても、住宅ローンは「宝の山」】は、正しくは【マイナス金利が解除されても、住宅ローンは「宝の山」】でした。読者の皆様にお詫びいたします。(2024年5月1日22:00 書籍オンライン編集部)